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株式会社SAI
生成AI

生成AIのファクトチェック|数字は出典と確認日つきで残す

執筆:清水 諒(株式会社SAI 代表取締役)

生成AIのファクトチェック|数字は出典と確認日つきで残す

Key Takeaways

  • 生成AIのファクトチェックとは、AIの出力にある数字・固有名・日付を元の資料と突き合わせて合わないものを直すか使わない作業で、AI事業者ガイドライン第1.2版の別添はハルシネーションを事実と異なることをもっともらしく回答するものと説明している。
  • 確かめる対象は文章全体ではなく数字と固有名と日付を含む一文に絞り、内容・種類・出典・発表日・確認日を並べた事実表に先に置いて本文はその表からだけ使う。
  • 当社の週刊AIニュース番組の2026年10月10日公開の回では、台本の裏で使った事実表89行すべてに確認日を入れ、公式・報道・計算・SNS・外部の評価の種類を分けた。
  • 作る工程と確かめる工程を分けた当社の事実表では、89行のうち9行に原文の言い回し・比べた条件・出典・個人の表記の直しが入り、うち1行は出典URLの書き足しだけだった。
  • 出典は有効期限と更新日まで読み、機械で開けない出典はブラウザで表示を確かめてから扱いを決め、確かめ切れない事実は確かめた範囲だけを書くか使わない。

社外に出す提案書を見直す場面で、ある数字がどの資料のどこに書いてあったかをすぐ示すには、生成AIの出力にある数字と固有名と日付を出典と確認日つきで一つずつ残しておきます。プロンプトの工夫で誤りは減っても、確かめた結果を書き込む表の列と、開けない出典や確かめ切れない事実の扱い方は社内で決めるしかありません。事実表の列の置き方と、機械で開けない出典・確かめ切れない事実をどう書くかの分かれ目を、当社の番組の表89行の記録とあわせて載せます。

引いた公的文書とモデル提供元の文書は、どれも2026年10月19日に開き直した範囲で書いています。当社の例は、自社のYouTubeチャンネルで公開した週刊AIニュース番組の台本の裏で使った事実表と、公開済み記事の出典の点検の運用記録です。1社の記録であり、確かめ方の効果を測った数字ではありません。

生成AIのファクトチェックとは、AIの出力にある数字・固有名・日付を元の資料と突き合わせ、合わないものを直すか使わない作業である

生成AIのファクトチェックとは、AIが書いた文章にある数字・固有名・日付を元の資料と一つずつ突き合わせ、合わないものを直すか使わない作業です。直す対象はAIとのやり取りではなく、自社が社外に出す資料や発信のほうです。確かめた結果は出典と確認日つきで残し、あとから誰が見ても同じ資料にたどり着けるようにします。

ファクトチェックという言葉は、社会に広がった情報の真偽を調べる活動を指します。総務省のICT活用リテラシー向上プロジェクトの解説は、ファクトチェックを「真偽検証」活動と説明しています。社会に広がっている真偽不明の言説や情報が事実に基づいているかを調べ、正確な情報を人々と共有する活動という意味です。同じページは、危害を与えるために意図的に作られた虚偽の情報を偽情報とし、危害の意図なく勘違いや誤解で広がった間違い情報を誤情報としています(総務省「知っておきたい16のキーワード:偽・誤情報 | ICT活用リテラシー向上プロジェクト」/2026年10月19日閲覧)。会社の中で行うファクトチェックが防ぐのは主に後者で、自社の資料が誤情報の出どころにならないようにする作業です。

生成AIの出力に確かめる工程が要るのは、誤りがもっともらしい形で出てくるからです。総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン第1.2版の別添は、「ハルシネーション等による誤った出力」というリスクの項目で、ハルシネーションを生成AIが事実と異なることをもっともらしく回答するものと説明しています(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(付属資料)(令和8年3月31日)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。本編は共通の指針「人間中心」の「偽情報等への対策」で、生成AIによって内容が真実・公平であるかのように装った情報を誰でも作れるようになったと書いています。そのうえで、AIが生成した偽情報・誤情報・偏向情報が社会を不安定化・混乱させるリスクが高まっていると認識し、必要な対策を講じるよう求めています(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(令和8年3月31日)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。

モデルの提供元も、回答を確かめる前提で使うよう案内しています。GoogleのGemini アプリ ヘルプは「Gemini アプリを使用する前に」の項で、Gemini アプリは間違えることがあると書いています。使うときは回答を再確認し、専門的な助言についてはGemini アプリの回答に依拠しないよう求めています(2026年10月19日時点の記載。Google「Gemini アプリを使用する - パソコン - Gemini アプリ ヘルプ」/2026年10月19日閲覧)。

生成AIのファクトチェックの流れ図。左から右へ、AIの出力から数字・固有名・日付を含む一文を抜き出し、事実表に置き、本文はこの表からだけ使う、の順に矢印でつないでいる。事実表の列は内容・種類(公式・報道・外部の評価・SNS・計算)・出典・発表日・確認日。表の下に分岐が2つあり、1つは機械で開けない出典をブラウザで開いて表示を確かめる道、もう1つは確かめ切れない事実を確かめた範囲だけ書くか使わない道。右上には表を作る工程とは別に置く裏取りの箱があり、原文の言い回しに合わせる・比べた条件を足す・出典を足すか開けた資料のURLにする・個人を特定しない表記にする、と書かれている

図は左から右へ、AIの出力から数字・固有名・日付を含む一文を抜き出し、事実表に置いてから本文に使う流れです。表の下の分岐は、機械で開けない出典と確かめ切れない事実の扱いを示しています。右上の裏取りの箱は表を作る工程とは別に置く確かめの工程で、原文の言い回しと比べた条件と個人の表記を直し、出典を足すか開けた資料のURLにします。以下の節は、図の左から順に進みます。

生成AIのファクトチェックの方法は、確かめる対象を数字と固有名詞と日付に絞るところから始める

確かめる対象は文章全体ではなく、数字と固有名詞と日付を含む一文に絞ります。意見や推論の部分は元の資料と突き合わせられませんが、数字と固有名と日付は資料に書いてあるかないかで判定できます。判定できる部分を先に固めておくと、残りの文章を読む時間を判断の中身に回せます。

抜き出す単位は、数字だけでなく数字を含む一文にします。数字だけを表に移すと、何と比べた数字か・いつの時点か・どの条件で測ったかが落ちます。固有名も同じで、製品名だけを写すと版や提供範囲の違いが消えます。行には一文をそのまま入れ、条件の言葉を削らないでおきます。

長い資料を元にAIに書かせるときは、書かせる前に根拠の箇所を抜き出させる方法があります。Anthropicの公式ドキュメント「ハルシネーションを減らす」は、長い文書(20kトークン超)を扱う作業では、作業の前にまず一語一句そのままの引用を抜き出すよう依頼する手法を挙げています。これで応答が実際のテキストに根拠づけられ、ハルシネーションが減るとしています(Anthropic「ハルシネーションを減らす」(英語版「Reduce hallucinations」)/2026年10月19日閲覧)。抜き出した引用はそのまま事実表の候補になり、元の資料のどこに書いてあったかを探す手間も減ります。

どの文から確かめるかは、出力が外に出たときの影響で決めます。AI事業者ガイドライン第1.2版の別添5(AI利用者向け)は、安全を考慮した適正利用の具体的な手法の一つに、出力によって重大な影響や被害が生じうる場合は人間の判断を介在させる仕組みに基づいて適宜判断することを挙げています(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(付属資料)(令和8年3月31日)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。社外向けの提案書や公開する発信は、社内の下書きより先に確かめる側に置きます。中小企業のAI導入事例を並べた記事でも、人に残した判断の一つは外に出す前の仕上げと確認でした。

数字は出典と発表日と確認日を同じ行に並べた表へ先に置き、本文はその表からだけ使う

抜き出した一文は、本文に書く前に事実表へ置きます。列は内容・種類・出典(資料名とURL)・発表日・確認日の5つです。本文に数字を書くときはこの表の行から写し、表に無い数字は本文に書きません。表を先に作っておくと、本文を何度書き直しても数字の出どころは表の側に残ります。

当社は自社のYouTubeチャンネルで週刊AIニュース番組「今週のAIニュース」を作っていて、2026年10月10日公開の回でもこの形の表を使いました。公開した回の台本の裏で使った事実表は89行で、89行すべてに確認日が入っています。調べた段階の表から番組で使う行を選んで台本の表にしました。番組の方針には、数字は事実表にあるものだけを使うことと確認日を言うことを書いています。事実表は社内の台本のデータなので公開していませんが、公開した概要欄には主な出典を載せました。

AIの回答に添えられたリンクは、表の出典の列をそのまま埋めるものではありません。GoogleのGemini アプリ ヘルプ「Gemini アプリの関連ソースを表示する」は、すべての回答に関連リンクやソースが含まれるわけではないと書いています。[ソース]ボタンが無い回答には、リンクが提供されていないという説明です(2026年10月19日時点の記載。Google「Gemini アプリの関連ソースを表示する - パソコン - Gemini アプリ ヘルプ」/2026年10月19日閲覧)。リンクが付いた回答でも、出典の列に書くのは開いて該当の記述を見つけた資料だけにします。

参照した資料を見える状態にしておく考え方は、IPA 産業サイバーセキュリティセンターの中核人材育成プログラム7期生が卒業プロジェクトとしてまとめた「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」(2024年7月)にもあります。同ガイドラインは運用で確認すべき透明性の一つに「参照データの透明性」を挙げ、Webのデータを参照した場合はそのURLを明示することを例に示しています。参照元の情報に誤りがあれば生成した回答にも誤りが含まれるため、どのデータが参照されたのかを確認して正誤を判断することが重要だとしています。同ガイドラインは本文に発行から2年の有効期限があり、ここでは期限を過ぎた文書として参照しています(IPA 産業サイバーセキュリティセンター(中核人材育成プログラム7期生 卒業プロジェクト)「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン(2024年7月)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。

公式発表と報道と外部の評価とSNSの投稿は、同じ数字でも種類を分けて書く

同じ数字でも、発表元が出したものと報道が伝えたものと第三者が測ったものでは重みが違います。事実表の種類の列は、この違いを本文まで運ぶためにあります。種類を書かずに本文へ写すと、報道の数字が発表元の数字のように読まれます。

当社の番組の事実表89行の種類は、公式68・報道13・計算4・SNS2・外部の評価2でした。計算は、資料にある数字や日付から算出した行です。番組の方針では、公式の数字と外部の評価と報道とリークを声と画面のラベルで分けると決めています。種類の違う数字を一つの文に並べるときは、どちらが公式でどちらが報道かを文の中で言い分けます。

種類を見分ける手がかりは、総務省のインターネット利用の案内にもあります。総務省の「安心・安全なインターネット利用ガイド」の特集ページは、真偽の不確かな情報を確かめる方法を4つ挙げています。他の情報と比べてみる・情報の発信元を確かめる・その情報がいつ頃書かれたものか確かめる・一次情報を確かめる、の4つです。「一次情報を確かめる」の項では、その情報が引用や伝聞であれば元になったオリジナルの情報源を探して確かめるよう勧めています(総務省「【特集】フェイクニュース | 安心・安全なインターネット利用ガイド」/2026年10月19日閲覧)。報道の行は、報道が引いている発表元の資料が見つかれば公式の行として書き直し、見つからなければ報道のまま残します。

公的機関の資料に当たる理由は、IPAの卒業プロジェクトのガイドラインも書いています。同ガイドラインは第7章の日本の項で、ユーザーがAIの作り出すハルシネーションなどに惑わされないためには、信頼のおける公的機関の情報を活用して事実関係を確認すべきだとしています。組織で使う際は継続的なAI教育を行い、もっともらしいAIの出力が正しいかを確認する習慣を根付かせることが重要としています(期限を過ぎた文書として参照。IPA 産業サイバーセキュリティセンター(中核人材育成プログラム7期生 卒業プロジェクト)「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン(2024年7月)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。SNSの投稿は発表元が確かめていない話として、外部の評価は誰がどの条件で測ったかを添えて書きます。

確かめる工程を作る工程と分けると、原文とずれた言い回しや抜けた条件が見つかる

事実表を作った工程のまま確かめると、作ったときと同じ読み方で同じ資料を読み直すことになります。作る工程と確かめる工程を分け、確かめる工程では一次資料を開き直して表の行と突き合わせます。

当社の番組の制作手順も、一次資料を読んで事実表を作る段と、一次資料を開き直して数字と日付を突き合わせる段を分けています。2026年10月10日公開の回では、事実表89行のうち9行に裏取りの段階で直しが入りました。直しの種類は次の4つです。

  • 原文どおりの言い回しに合わせる
  • 比べた条件(設定)を足す
  • 出典を足すか、実際に開けた資料のURLにする
  • 一般の個人を特定しない表記にする

9行のうち1行は出典URLの書き足しだけで、中身は直していません。4つの直しは、それぞれ別のずれを防ぎます。言い回しが原文とずれると、発表元が条件つきで書いたことが言い切りに変わります。比べた条件が抜けると、設定の違う数字どうしを同じ条件で比べたように読めます。出典のURLが実際に開けた資料でなければ、次に確かめるときに同じ記述へたどり着けません。一般の個人の名前は、事実として正しくても番組で出す理由がありません。

AIの側で使える確かめ方にも、作った出力どうしを比べる手法があります。Anthropicの同じドキュメントは高度な手法として「Best-of-N検証」を挙げています。同じプロンプトで複数回実行して出力を比べるもので、出力間の不一致はハルシネーションを示している可能性があるとしています(Anthropic「ハルシネーションを減らす」(英語版「Reduce hallucinations」)/2026年10月19日閲覧)。食い違った行は、一次資料を開き直す順番の先頭に置きます。

AIエージェントに作業を任せる場合も、確かめる段を公開や送信の前に挟む位置はAIエージェントの権限設計と同じ考え方で決められます。作る段と確かめる段が同じ設定のまま続いていると、確かめる段が形だけになります。

出典は日付と有効期限まで読み、機械で開けなかったものはブラウザで表示を確かめてから扱いを決める

発表日だけでなく、更新日と有効期限まで読む

出典の日付は発表日だけでは足りません。総務省の特集ページが確かめる方法の一つに「その情報がいつ頃書かれたものか確かめる」を挙げているように、記述がいつの時点のものかは事実の一部です(総務省「【特集】フェイクニュース | 安心・安全なインターネット利用ガイド」/2026年10月19日閲覧)。発表日が古くても更新日が新しいページは、更新日の記述を読みます。

当社の番組の事実表では、89行のうち78行に発表日(月までのものを含む)かページの更新日が入り、うち16行は更新日でした。残る11行は日付の記載が無いページや法令のページなどで、日付の列は空にするか日付が無い旨を書き、時点は確認日で示しました。日付の無いページでは、いつの記述かを示せるのは確認日だけです。発表日の列が空の行を本文に使うときは、「〇月〇日時点の記載」と確認日を添えると時点を取り違えません。更新日しか無い行は、発表日ではなく更新日と分かる書き方にします。

文書によっては、本文に有効期限が書かれています。IPAの卒業プロジェクトのガイドラインは免責事項に、本書の有効期限は発行日から2年間と書いています。2026年10月19日時点では、その期限を過ぎた文書にあたります(IPA 産業サイバーセキュリティセンター(中核人材育成プログラム7期生 卒業プロジェクト)「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン(2024年7月)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。当社は公開済みの記事でこのガイドラインを引いていて、本文の有効期限の記載に気づいたあと、引用していた7本の記事へ一括で注記を足しました(2026年10月6日)。期限を過ぎた文書を引くなら、期限を過ぎた文書として参照していると同じ段落に書きます。

有効期限は、引用したい章ではなく免責事項のような場所に書かれていることがあります。引用する箇所だけを読んでいると見落とすので、事実表に出典を足すときは免責事項や奥付も開きます。

機械で開けなかった出典は、ブラウザでの表示で扱いを分ける

出典の数が増えると、リンクが今も開けるかを機械で点検したくなります。機械の点検は速い一方で、開けなかった理由までは教えてくれません。

当社は公開済み記事のうち、求人ページのように掲載が終わりうる出典を機械で開き直す点検を持っています。この点検で3件が開けませんでした。2件はボット遮断(403)で、ブラウザで開くと表示されたので、2026年10月6日から機械の判定とは別の扱いにする規則にしました。残る1件は求人の掲載が終わっていたので、記事の記述と出典を直しました。

機械で開けなかった出典の扱いは3つに分かれます。

  • ブラウザでは表示される: 出典はそのまま残し、機械の判定とは別の扱いとして記録する
  • ページが消えたか中身が変わった: 記事の記述と出典を直す
  • ブラウザでも開けない: 同じ記述のある恒久的な一次資料に差し替えるか、その記述を外す

どの扱いにしたかと、その理由も残します。AI事業者ガイドライン第1.2版の本編は共通の指針「アカウンタビリティ」の「トレーサビリティの向上」として、データの出所や利用中に行われた意思決定などを追跡・遡求できる状態を確保するよう求めています。範囲は、技術的に可能かつ合理的な範囲とされています(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(令和8年3月31日)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。扱いを決めた日と理由を残しておけば、次の点検で同じ判断をやり直さずに済みます。

ハルシネーションは手法を重ねても残るので、確かめ切れなかった事実は確かめられた範囲だけを書くか使わない

確かめる手順を整えても、すべての事実を確かめ切れるわけではありません。発表元が書いていない条件や、開けない資料にしか載っていない数字は残ります。そのときは確かめられた範囲だけを書くか、その事実を使いません。

モデルの提供元も、手法を重ねれば誤りが無くなるとは書いていません。Anthropicの同じドキュメントは末尾の注記で、紹介した手法はハルシネーションを大幅に減らすが完全には無くさないと書いています。そのうえで、特に重大な意思決定では重要な情報を検証するよう求めています(Anthropic「ハルシネーションを減らす」(英語版「Reduce hallucinations」)/2026年10月19日閲覧)。確かめ切れない行は残るという前提で、扱いを先に決めておきます。

書かせる段階でも、確かめ切れないことを書かせない指示ができます。同じドキュメントは、分からないと言ってよいと伝える基本の手法(RAGの解説でも触れました)に加え、「引用で検証する」手法を挙げています。応答を生成した後に各主張を裏付ける引用を探させ、引用が見つからない主張は撤回させるというものです(Anthropic「ハルシネーションを減らす」(英語版「Reduce hallucinations」)/2026年10月19日閲覧)。撤回させた主張は事実表に入れず、本文にも書きません。

確かめた範囲を読み手に伝える道具が但し書きです。当社の番組の台本には但し書きが62件あり、公開した概要欄には主な出典と但し書きの要点を載せました。台本の但し書きの冒頭には、扱った期間と、情報がいつ時点のものかを置いています。確かめ切れなかったことを本文から消すだけでなく、確かめた範囲を但し書きで言うと、読み手は数字の重みを自分で量れます。

使うか使わないかを決めるのは、出力を事業に使う側です。AI事業者ガイドライン第1.2版の本編第5部は、AI利用者の重要な事項として公平性が担保されたデータを入力し、プロンプトに含まれるバイアスに留意して責任をもってAIの出力結果を事業に使うかどうか判断するよう求めています(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(令和8年3月31日)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。別添5はその解説で、AI利用者はAIの出力結果に疑義がある場合、必要に応じてAI提供者(またはAI提供者を通じてAI開発者)に問い合わせることが期待されるとしています(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(付属資料)(令和8年3月31日)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。確かめ切れない事実を外に出さないという線は、生成AIの社内利用ルールの公開前に見る範囲として書いておくと迷いが減ります。

生成AIのファクトチェックについてよくある質問

Q. AIに自分の答えを確かめさせれば足りますか?

確かめる候補を絞る役には立ちますが、最後は元の資料を開いて確かめます。GoogleのGemini アプリ ヘルプは、Geminiがハルシネーションを起こし、不正確な情報を事実と錯覚して提示することがあると書いています。例に挙げているのは、どうトレーニングされたかやソースの引用・最新情報の提供といった機能をどう実行するかを尋ねられたときで、自身の仕組みの説明を誤ることがあるとしています(2026年10月19日時点の記載。Google「Gemini アプリの回答について - Gemini アプリ ヘルプ」/2026年10月19日閲覧)。AIに出典を挙げさせた場合も、挙がった資料を開いて該当の記述があるかを見るまでは事実表に入れません。

Q. ファクトチェック用のツールを入れれば、手順は決めなくてよいですか?

ツールが出すのは判定の候補で、扱いを決める手順は社内に要ります。機械で開けなかった出典の節に書いたとおり、機械の点検でも判定だけでは扱いを決められない出典が出ます。どの種類の数字をどの資料で確かめるかと、確かめ切れないときにどう書くかを先に決めておけば、ツールはその手順の一部として使えます。

Q. 社内文書を要約させた場合も確かめる必要がありますか?

要約を社外に出すなら、数字と固有名と日付を含む文は元の文書と突き合わせます。社内文書を検索して答える仕組み(RAG)も、誤答を無くすものではなく根拠を確認できる状態を作るものです(RAGの解説)。元の文書が長いときは、先に根拠の箇所を抜き出させる方法が使えます。社内だけで読む要約でも、事実表の出典の列に元の文書名と版を残しておくと後で確かめ直せます。

Q. 確かめる役は誰が持てばよいですか?

文書を作る役とは別に、その文書を社外に出す判断をする役が持ちます。作る工程と確かめる工程を分ける話を、そのまま役に置き換えた形です。確かめる役に何を教えるかは、AI社内研修のやり方で研修の最後に人の確認点を置く構成として書きました。役の名前は個人名ではなく役職名で決めておくと、担当が替わっても工程が残ります。

SAIの視点:裏取りで直した行に、数字を別の値に書き換えた行は無かった

2026年10月10日公開の回で裏取りの段階に直しが入った9行は、言い回し・比べた条件・出典・個人の表記の4種類の直しでした。数字を別の値に書き換えた行は、記録の中に1行もありません。

株式会社SAIのキャラクターが、虫眼鏡で紙の資料を一行ずつ読み、机の上にチェック印の付箋を並べているイラスト

社内でファクトチェックの工程を作るなら、数字の照合とは別に、条件と言い回しを原文と読み比べる時間を工程に入れておきます。数字が合っているかだけを見る確認は短く済みますが、それだけではこの記録の9行の直しに当たる箇所を読まずに通すことになります。確かめる工程で時間をかける先は、数字の桁より数字を含む文のほうです。

いま社外に出ている提案書から数字を1つ選び、書いてある出典を開いて同じ記述までたどり着けるかを試してみてください。たどり着けなかった数字のある業務が、確かめる工程を置く場所の候補です。送っていただく情報は、AIの出力が社外に出る業務の一覧と、それぞれをいまどこで確認しているかの2点です(お問い合わせ)。その一覧をもとに、AI導入支援の業務への組み込みと社内研修の中で、出典を開く工程を業務の流れのどこに入れるかを決めます。

出典と確認日

外部の出典はいずれも2026年10月19日閲覧。Google の Gemini アプリ ヘルプは2026年10月19日時点の記載。当社の数値は自社の週刊AIニュース番組の台本の裏で使った事実表と、記事の出典の点検の記録から取ったもので、効果を測った数値ではない。