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株式会社SAI
技術解説

RAGとは?社内文書に答えるAIをわかりやすく解説

執筆:清水 諒(株式会社SAI 代表取締役)

RAGとは?社内文書に答えるAIをわかりやすく解説

Summary

RAG(検索拡張生成)とは、AIが回答する前に社内文書などの資料を検索し、見つかった内容に基づいて答える仕組みです。AIに社内知識を答えさせる方法として最も実用的で、「AIが嘘をつく」問題への現実的な対策でもあります。本記事では、RAGの仕組みを図書館司書のたとえで解説し、できること・できないこと、導入前に知っておくべき「精度の8割はデータ整備で決まる」という現実、社内導入の進め方を紹介します。

「ChatGPTに就業規則のことを聞いても、うちの会社のルールは答えられないよね?」——その通りです。汎用のAIは、あなたの会社の文書を知りません。この問題を解決する技術が**RAG(ラグ)**です。

社内ナレッジに答えるAIチャット、問い合わせ対応の自動化、マニュアル検索——企業のAI活用で最も需要の多いこれらの裏側では、ほぼ必ずRAGが動いています。本記事では、この仕組みをビジネスパーソン向けにかみ砕いて解説します。

RAGとは——「調べてから答えるAI」

RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)とは、AIが回答を作る前に、関連する資料を検索し、見つかった内容に基づいて答える仕組みです。

図書館のレファレンス司書をイメージしてください。優秀な司書は、質問を受けるとまず書庫から関連資料を探し出し、その資料を根拠に答えます。RAGはこれと同じことをAIにやらせる技術です。

  1. 質問を受け取る(「育休は何日前までに申請?」)
  2. 社内文書の中から関連する箇所を検索する(就業規則の該当条文)
  3. 見つかった文書を根拠として、AIが回答を組み立てる

ポイントは、AIの「記憶」に頼らず、毎回資料を見てから答えることです。

なぜRAGが重要か——「AIの嘘」への現実解

生成AIには、もっともらしい嘘を自信満々に答えてしまう性質(ハルシネーション)があります。業務利用での最大の懸念はここです。

RAGはこの問題への現実的な対策になります。回答の根拠が検索された文書に限定されるため、「どの文書に基づく回答か」を出典として示せるからです。利用者は出典を確認でき、根拠がなければ「文書内に情報がありません」と答えさせることもできます。

完全に嘘がなくなるわけではありませんが、「根拠を確認できる状態」と「できない状態」の差は、業務利用では決定的です。

RAGでできること——業務での代表例

  • 社内ナレッジQ&A:就業規則・経費規程・業務マニュアルへの質問に即答する社内チャット
  • 問い合わせ対応の支援:顧客からの質問に対し、製品マニュアルや過去のQ&Aを根拠に回答案を作る
  • 契約書・仕様書の照会:大量の文書から「この条件はどの契約に入っていたか」を探して答える
  • 営業ナレッジの活用:過去の提案書・商談記録から、類似案件の知見を引き出す

共通するのは「答えが社内のどこかに文書として存在する」業務です。中小企業がまず自動化すべき業務の筆頭に挙げた「問い合わせ・社内質問への一次対応」は、まさにRAGの主戦場です。

RAGの限界——できないことも知っておく

導入前に、限界も正直に知っておくべきです。

  1. 文書にないことは答えられない:当然ながら、資料が存在しない質問には答えられません
  2. 文書が間違っていれば、回答も間違う:古い規程が残っていれば、古いルールを答えます
  3. 集計・推論は苦手:「先月の売上上位10商品は?」のような集計はRAGではなくデータ分析の領域です
  4. 検索がハズれると回答もハズれる:質問の言葉と文書の言葉がかけ離れていると、正しい資料を見つけられないことがあります

成否の8割は「データ整備」で決まる

RAG導入の相談で、私たちが最初に見るのはAIの設定ではなく文書の状態です。実際のプロジェクトでは、次のような課題が精度を左右します。

  • 同じ規程の新旧バージョンが混在している(→どちらを根拠にするか混乱する)
  • 文書がスキャン画像のままで、テキストとして読めない
  • 表や図に重要な情報が詰まっている(→抽出に工夫が必要)
  • 「本当の運用ルール」が文書化されておらず、ベテランの頭の中にある

つまりRAG導入は、社内ナレッジの棚卸しと整備のプロジェクトでもあります。逆に言えば、この整備自体が、AIと関係なく会社の資産になります。

導入の進め方——小さく確実に

RAGの導入も、AI導入の一般的な進め方と同じく「小さく始める」が鉄則です。

  1. 対象を1領域に絞る:全社文書を一気に入れず、まず「経費規程だけ」「製品マニュアルだけ」から
  2. 想定質問集でテストする:現場から「よくある質問」を30〜50個集め、正答率を測る
  3. 出典表示を必須にする:回答には必ず根拠文書へのリンクを付け、利用者が確認できる形にする
  4. 間違いを直す運用を作る:誤答が出たら文書側を直す——このループが精度を育てます

SAIの視点:RAGは「作って終わり」にできない仕組み

私たち株式会社SAIは、RAGを使った社内ナレッジ活用・問い合わせ対応の構築をAI導入支援の一環として提供しています。文書整備から構築・精度検証・運用定着まで、エンジニアが現場に入るFDE型で伴走します。

「うちの文書の状態でRAGは使えるか?」という診断からで構いません。お気軽にご相談ください