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中小企業のAI導入事例|AIに渡した業務の多くは文書の作業

執筆:清水 諒(株式会社SAI 代表取締役)

中小企業のAI導入事例|AIに渡した業務の多くは文書の作業

Key Takeaways

  • 中小企業のAI導入事例はAIに渡した業務と人に残した判断の組として読むもので、事例集の業種名ではなく業務名で比べると自社の業務一覧に当てはめられる。
  • 白書の事例でAIに置き換えられていたのは英語資料の要約と翻訳・書類の転記と資料探し・問い合わせ対応の定型化といった文書の作業で、2026年版中小企業白書の自由回答の分析でもどの業種でも文書作成と要約に関する回答が多かった(2026年10月6日閲覧)。
  • 人に残した判断は外に出す前の仕上げと確認とAIに渡す範囲の決定に分かれ、オプトサイエンスでは広告の文案を営業担当者が推敲し、生成AIが示した情報は必ずファクトチェックすることを徹底している(2026年10月6日閲覧)。
  • 当社の導入事例では広告代理店が制作と運用の下書きと集計をAIに渡して広告運用の判断と仕上げを担当者に残し、BCP支援はスタッフの研修から始めてAIの使い方を改善する役をスタッフ自身に置いた。
  • 事例が当てはまらないのは業務が文書になっていない会社と確認する人がいない会社で、技術継承にAIを使うタヤマスタジオでも対象は鋳造などの基礎的な技術とノウハウにとどまっている(2026年10月6日閲覧)。

中小企業向けの事例集は目次が製造業・小売業・建設業のような業種名で並んでいることが多く、自社と同じ業種の欄が見当たらないところで手が止まります。同じ業種の事例が見つかっても、書類の転記なのか広告の文案なのかという業務名と人が手放さなかった確認は本文の奥にあります。白書の事例4件と当社の導入事例2件をAIに渡した業務と人に残した判断の表に置き直し、自社の業務一覧から同じ作業を探す手順までつなげます。

公的な事例は中小企業庁の中小企業白書(2026年版・2025年版)と総務省の令和8年版情報通信白書に載った記載だけを使い、社名と数値は白書の表記のとおりに書きます。事例の数値は白書の本文の記載で(アイニコグループは同社提供の数値)、監査を経た比較ではありません。調査の数値は中小機構とIPAの公表資料から取りました。当社の2事例は導入事例ページに書いた取り組みの範囲に限り、期間や頻度や変化の数値は書きません。外部の記述はいずれも2026年10月6日に読んだ範囲です。

中小企業のAI導入事例とは、同規模の会社がAIに渡した業務と人に残した判断の組で、事例集の業種名より業務名で読む

中小企業のAI導入事例とは、同じくらいの規模の会社がAIに任せた業務と、任せたあとも人が手放さなかった判断を組にして書いた記録です。事例には業種名が添えられていますが、自社に当てはめるときに比べられるのは業種ではなく業務名のほうです。光学機器の商社と金属加工の工場では業種が違っても、英語の資料を読む作業や書類を書き写す作業は自社の業務一覧に同じ名前で見つかります。

中小企業のAI導入事例を2列で並べた表。左の列はAIに渡した業務、右の列は人に残した判断で、行の見出しは業種ではなく業務名になっている。上の3行は白書の事例で、英語の技術資料の要約と翻訳(勉強会のあと)の行は右の列が広告の最終稿の推敲と生成AIが示した情報のファクトチェック(オプトサイエンス・2026年版中小企業白書)、書類の転記と集計と資料探しの行は右の列が現場から集めた改善要望のどれを直すかの判断(岡田研磨・同白書・判断の種類は当社の分類)、問い合わせ対応の定型化(勉強会のあとのプロジェクトの成果の一つ)の行は右の列が課題をAIで解決すべきかの判断と新しいツールを入れるかの判断(アイニコグループ・令和8年版情報通信白書)。下の2行は当社の導入事例で、制作と運用の下書きと集計の行は右の列が広告運用の改善提案の判断と仕上げ(広告代理店)、議事録の要約と文書のドラフトの行は右の列がドラフトから先の仕上げとAIの使い方の改善(BCP支援)。表の下に、事例集の業種名より業務名で比べるというまとめと、判断の種類のタグと当社の事例の右の列は当社の読み取りであるという注記がある

図は、この記事で読む事例のうち5件を2列の表にしたものです。上の3行が白書の事例で、下の2行が当社の導入事例です。右の列はどの行も、当社の分類では外に出す前の仕上げと確認か、AIに渡す範囲の決定のどちらかに当たります。

事例をわざわざ読み替えるのは、事例の情報そのものが中小企業の手元に十分届いていないからです。中小機構の調査でAI・ITの導入にかかる社内の理解や情報量を聞いた設問では、「成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている」に当てはまらない(「あまり当てはまらない」と「全く当てはまらない」の合計)と答えた割合が83.3%で最も高くなりました(独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)(全体版)」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。手元に届く事例が限られるなかで業種まで絞ると、自社に近い例はさらに見つけにくくなります。

白書の生成AI活用事例でAIに置き換えられていたのは、資料の要約や書類の転記といった文書の作業である

この節で読む白書の生成AI活用事例でAIに置き換えられていたのは、英語資料の要約と翻訳・書類の転記と資料探し・問い合わせ対応の定型化といった文書を扱う作業です。個々の出典は各事例の段落に置き、先に白書とIPAの集計で同じ傾向を確かめます。

2026年版中小企業白書の第2-2-90図は、AI活用に取り組んだ事業者の自由回答をテキスト分析した図です。どの業種でも多かったのは「文書作成、要約、校正」と「業務自動化・効率化(RPA含む)」に関する回答でした(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。同じ白書の第2-2-88図では、AI活用に取り組んだ事業者のうちAIを「活用している」と答えた割合が「営業・販売・顧客対応部門」と「バックオフィス部門」で「製造・生産管理・物流部門」より高くなっています(同PDF/2026年10月6日閲覧)。

IPAの「DX動向2026」(2026年7月30日公開)でも、AI利活用の用途で最も多いのは「文書・音声の要約・翻訳・校正」の82.5%でした。「文書・レポートの作成(社内・社外)」80.5%と「情報検索・収集・分析・レポーティング」77.0%が続きます(独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026 広がるAI導入、DXは変われるか(本文)」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。この調査の回答企業は全規模で、中小企業に限った数値ではありません。

以下の4件は、白書の本文からAIに置き換えた業務と人に残した判断の両方が読み取れる事例です。表の「AIに渡した業務」は当社が付けた列の名前で、白書が導入の順番まで書いているとは限りません。見出しは業種ではなく業務名で付けました。

勉強会のあと、英語の技術資料の要約と翻訳で営業担当者の使い方が広がった例

2026年版中小企業白書の事例2-2-3は、東京都新宿区でレーザー関連の光学機器を輸入販売する株式会社オプトサイエンス(従業員数33名・機械器具卸売業)の取り組みです。同社は2023年に生成AIを導入して社長自らあらゆる業務への活用を試み、プロンプト(入力する指示や質問)の書き方について勉強会も開きました。その後に広がったのが、海外論文を要約させ英語マニュアルを翻訳させて要点を抜き出させる使い方で、営業担当者が専門知識を身につけるためのものです(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

広告作成では、商品選定・キャッチコピー・選定理由・訴求ポイントを生成AIに出させ、営業担当者が推敲して仕上げる方法をとっています。生成AIが示した情報の正確性については、必ずファクトチェックを行うことを徹底していると書かれています。同事例の記載では、広告からの問合せは以前の月平均5件程度から多い月には45件に増えました(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。1社の記載なので、掲載先や商品の条件までは他社と比べられません。

白書が営業担当者の活用として挙げる業務は資料の要約と翻訳で、人に残した判断は広告の最終稿の推敲と情報の正確性の確認です(同PDF/2026年10月6日閲覧)。AIが案を出し、外に出る文章は人が仕上げるという線が事例の中で2回引かれています。

書類の転記と資料探しを、社内で作った管理システムに置き換えた例

同じ白書の事例2-2-14は、石川県金沢市の岡田研磨株式会社(金属製品製造業)の取り組みです。出発点は、工場担当者が作った資料を事務担当者が別の資料へ転記・集計する作業と、資料探しにかかる手間でした。同社はこれを生成AIとの対話で自作した統合管理システム「OKADA Board」で置き換えています(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

システムの改善要望は各部門の若手で作るDX推進チーム(DXはデジタル技術による業務の変革)が現場から集め、岡田専務が一つずつ拾い上げて日々自前で改善を進めています。導入で月5,000〜6,000枚分の紙をなくし、紙資料の管理工数も減って月530時間程度の労働時間を削減したと記載されています(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

AIで置き換えた業務は書類の転記と集計と資料探しで、置き換えに使ったのは生成AIとの対話で自作したシステムです。人に残した判断は現場の要望のうちどれをどう直すかで、システムができたあとも直す順番を決める人は社内にいます(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

問い合わせ対応を定型化する前に、全社員がAIとのやりとりを体験した例

令和8年版情報通信白書は、奈良県と京都府南部を中心に注文住宅・リフォーム・介護・保育などを手がける中小企業、アイニコグループ株式会社の事例を載せています。同社は本格的なAI活用プロジェクトの前に全社員向けの勉強会を開き、業務に直結する内容ではなく親しみやすい物語を題材にして社員にAIとのやりとりを体験させました(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

同社の成果として、不動産事業部門は問合せ対応のテンプレート化と自動化で年間897時間を削減しました。白書はこの数値を同社提供の数値(2026年4月1日時点)と注記しています(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

社内でまだ使っていない新しいツールを使いたいときは、セキュリティ面の情報を確認したうえで支援業者に都度相談し、専門家の助言を受けながら導入するかどうかを検討しています。専門家の支援が特に役立ったのは、「その課題はAIで解決すべきかどうか」という課題設定時の判断と、プロジェクト始動後の個別相談だったといいます。ルールは個人情報を入力しないことやオプトアウト設定を必ず行うことなどを最低限として周知し、そのうえでAIを使う方針です(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。オプトアウト設定は、一般に入力内容をAIの学習に使わせないための設定を指します(当社の補足)。

勉強会のあとに自動化した業務の一つが問い合わせ対応の定型化で、自動化の前に置いたのは業務ではなく体験の場でした。人に残した判断は、ある課題をAIで解くべきかどうかと新しいツールを入れるかどうかで、この判断には社外の専門家の助言も使っています(同PDF/2026年10月6日閲覧)。

熟練職人の思考を、若手が自習できる形に移した例

2025年版中小企業白書の事例1-1-1は、岩手県盛岡市で南部鉄器を製造・販売するタヤマスタジオ株式会社(従業員数8名・金属製品製造業)の取り組みです。同社は2023年から技術継承にAIを使い、熟練職人の思考をモデル化して若手職人が製造技術やノウハウの基礎的な部分をAIから自主学習できるようにしました(中小企業庁「2025年版 中小企業白書(全文)」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

年齢の離れた職人同士のコミュニケーションの質が上がり、ベテラン職人の指導時間が減るといった効果が見え始めているとされています。一方でAIの活用は現時点では鋳造などの基礎的な技術とノウハウに限られ、着色や火入れ具合といった高度なノウハウにも使えるよう試行錯誤を続けている段階です(中小企業庁「2025年版 中小企業白書(全文)」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

AIへ移したのはベテランの指導のうち基礎の部分で、高度なノウハウの継承はまだ人の手元にあります。文書の作業ではありませんが、AIに渡せたのが基礎の部分までで渡し方を探っている部分が人に残っている点は、他の3件と同じ線上にあります(同PDF/2026年10月6日閲覧)。

当社の事例では、広告代理店は制作と運用の下書きと集計をAIに渡し、BCP支援はスタッフの研修と日々の文書への組み込みから始めた

当社の導入事例ページに載せた2件では、広告代理店は制作と運用の下書きと集計をAIに渡しました。BCP(事業継続計画)の策定を支援する企業では、スタッフの研修と日々の文書への組み込みから始めています。どちらも顧客の名前は伏せて業種で書いており、ここでも事例ページの記載の範囲だけを使います。

広告代理店は、制作と運用の下書きと集計をAIに渡し、判断と仕上げを担当者に残した

広告代理店の事例の事例ページに書いた困りごとは3つでした。ホームページやLP(広告の受け皿になる1枚のページ)の制作に時間がかかることと、SNS投稿の作成と予約が手作業で担当者に属人化していたことです。もう1つは、広告運用のレポート作成と改善提案に多くの工数がかかっていたことでした。

自動化したのは、制作と運用のそれぞれで下書きと集計にあたる部分です。ホームページとLPはテンプレートと生成AIを組み合わせて構成・文章・デザインの下書きを作り、SNSは投稿文と画像案の生成から投稿予約と反応の集計までを仕組みにしました。広告運用は配信データを自動で集計し、改善提案のたたき台までをAIが作ります。バナーや広告文のバリエーションもAIで量産し、A/Bテスト(複数案を並べて比べる検証)を回しやすくしました。

人に残したのは広告運用の改善提案の判断と仕上げです。事例ページには、広告運用の自動レポートについて担当者が判断と仕上げに集中できる形にしたと書いています。

BCP支援は、研修を先に置いてから議事録と文書のドラフトをAIに渡し、使い方の改善をスタッフに残した

BCP支援の事例の困りごとは、BCP策定支援の資料作成とヒアリング整理が労働集約的だったことです。スタッフのスキル差で提供品質とスピードにばらつきがあり、AIを使いたい気持ちはあっても現場で使いこなせていませんでした。

最初に置いたのは業務に直結したAI研修で、一般論ではなく実際の業務で使えるプロンプト(AIへの指示文)の型を用意してハンズオン形式で行いました。そのあとでヒアリング議事録の自動要約・BCP文書のドラフト生成・チェックリストの自動化を日常業務に組み込んでいます。事例ページの3つ目の取り組みは、スタッフ自身がAIの使い方を改善して広げられる状態まで支援することでした。

事例ページに書いたのはドラフト生成までで、そこから先の仕上げはスタッフの側に残っていると読めます。AIの使い方そのものを改善して広げる役も、スタッフ自身に置いています。

白書の事例と並べると、当社の2件はそれぞれ白書の事例と同じ線を引いていた

広告代理店の事例は、AIが案やたたき台を出して担当者が判断と仕上げをする点でオプトサイエンスの広告作成と同じ線を引いています。オプトサイエンスは営業担当者の使い方が広がる前にプロンプトの書き方の勉強会を開いており、この点ではBCP支援の事例と同じ順番です(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。BCP支援の事例は、日々の業務に組み込む前に研修を置いた点でアイニコグループとも同じ順番です(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

ただし研修の題材は、アイニコグループとBCP支援で違います。アイニコグループは業務に直結しない物語を題材にし、BCP支援では実際の業務で使えるプロンプトの型を題材にしました(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。岡田研磨はAIとの対話でウェブアプリの仕組みを学ぶところから入り、タヤマスタジオは熟練職人の思考をモデル化するところから入った例で、当社の2件とは入り方が違います(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)(中小企業庁「2025年版 中小企業白書(全文)」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

人に残した判断は、外に出す前の仕上げと確認と、AIに渡す範囲の決定に分かれる

6件の事例で人に残した判断を並べると、当社の分類では外に出す前の仕上げと確認と、AIに渡す範囲の決定に分かれます。前者は文章や文書が社外に出る直前の工程で、後者はAIを使う範囲そのものを決める工程です。

表は横にスクロールできます。

AIに渡した業務 人に残した判断 判断の種類 出典
英語の技術資料の要約と翻訳(オプトサイエンス・勉強会のあと) 広告の最終稿の推敲と生成AIが示した情報のファクトチェック 外に出す前の仕上げと確認 2026年版中小企業白書 事例2-2-3
書類の転記と集計と資料探し(岡田研磨) 現場から集めた改善要望のどれを直すか AIに渡す範囲の決定(当社の分類) 2026年版中小企業白書 事例2-2-14
問い合わせ対応の定型化(アイニコグループ・勉強会のあとのプロジェクトの成果の一つ) 課題をAIで解決すべきかと新しいツールを入れるか AIに渡す範囲の決定 令和8年版情報通信白書
熟練職人の基礎の知識を若手の自習用に移す(タヤマスタジオ) 着色や火入れ具合といった高度なノウハウの継承 AIに渡す範囲の決定 2025年版中小企業白書 事例1-1-1
制作と運用の下書きと集計(当社・広告代理店) 広告運用の改善提案の判断と仕上げ 外に出す前の仕上げと確認 当社の導入事例ページ
議事録の要約と文書のドラフト(当社・BCP支援) ドラフトから先の仕上げとAIの使い方の改善 両方 当社の導入事例ページ

判断の種類の列は当社の分類で、当社の2事例の「人に残した判断」には事例ページの記載から当社が読み取ったものを含みます。岡田研磨の白書の記載は、現場の意見を集めて専務が自作のシステムを直しているところまでです(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。直すたびにそのシステムが受け持つ作業が変わるので、当社はこの行をAIに渡す範囲の決定として読みました。

人に残す判断を先に設計する考え方は、情報通信白書のまとめにも出てきます。同白書によると、ヒアリングしたAI活用先進企業の多くは業務プロセスを再設計するときに人間とAIの役割分担を重視しています。どのタスクではAIを人間の思考や判断の補助にとどめ、どのタスクをAIに自律的に実行させるかを検討しているという記述です(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。表の右の列は、各社がこの検討をどこで線引きしたかの記録として読めます。

中小企業の側から見ても、判断が人に残ることは調査に出ています。中小機構の調査では、AIを導入したあとも効率化が難しいと感じる業務の最多が「人の判断が必要な業務(営業提案、顧客折衝など)」の67.1%でした。次いで「社内調整・意思決定など属人的な業務」が33.3%、「経営判断や戦略立案に関する業務」が31.3%です(独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)(全体版)」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

2026年版中小企業白書のコラム2-2-1は、中小企業はAX(AIトランスフォーメーション)による変容力が高いと述べています。不足しがちな企画・事務・広報・会計のスキルをAIで補い、AIが導く答えを経営者が判断して素早く意思決定できるという理由です(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。事例の右の列を見ると、この『AIが導く答え』を判断する役は経営者だけでなく営業担当者のような現場の担当者にも割り振られていたと当社は読んでいます。

当社が自社のウェブサイト運用で任せた作業と人に残した判断を2列にした表でも、人の側に残ったのは公開・送信・改題・支払いという外に出た瞬間に戻せなくなる操作でした(Claude Codeの業務効率化)。右の列が外に出す直前の工程に集まる点は、白書の事例のうち前者の型と同じです。

事例を自社に当てはめるときは、業種ではなく作業の単位で比べる

事例を自社に当てはめるときは、業種ではなく作業の単位で比べます。作業の単位とは、何を受け取って何を作り誰が確認するかが1行で書ける大きさのことです。オプトサイエンスの事例なら「海外論文を受け取って要点を日本語で書き出し、営業担当者が読む」が1行になります。

事例の業務名を作業の単位に割ると、次の表になります。右端の列は、自社の業務一覧で同じ形を探すときの当社の例示で、白書や事例ページの記載ではありません。

表は横にスクロールできます。

事例の業務名 受け取るもの 作るもの 人が確認する場所 自社で探すときの例(当社の例示)
英語の技術資料の要約と翻訳 海外論文と英語マニュアル 要点を抜き出した日本語の文 営業担当者が読む(広告では情報のファクトチェックを徹底) 取引先から届く外国語の仕様書を読む作業
書類の転記と集計 工場担当者が作った資料 転記と集計を代わりに行う社内システム(生成AIとの対話で自作) 現場の意見を拾い上げてシステムを直す専務 同じ数字を別の表へ書き写す作業
問い合わせ対応の定型化 届いた問い合わせ 定型にした回答 課題を選ぶ社内の判断と社外の専門家の助言 同じ質問に毎回書いている返信
制作の下書き テンプレート 構成と文章とデザインの下書き 判断と仕上げをする担当者 毎回ゼロから書き始めている提案書や告知文
議事録の要約と文書のドラフト ヒアリングの記録 議事録の要約と文書のドラフト 仕上げをするスタッフ 打ち合わせのあとに書く議事録

表の左から3列目までが書ければ、その行は自社の業務一覧の行と同じ物差しで並べられます。

作業を1行ずつに割る表の作り方は、AI導入のための業務の棚卸しに6列と判定列の形で置いています。事例の業務名が自社の一覧で見つかったあとの順番は、中小企業の生成AI業務自動化で最初の3業務を並べた2つの基準(下書きの材料が手元にあるかと間違いが社内で見つかるか)で決められます。

事例が当てはまらないのは、業務が文書になっていない会社と確認する人がいない会社である

事例が当てはまらないのは、AIに渡す業務が文書になっていない会社と、AIが出したものを確認する人がいない会社です。オプトサイエンスの事例でAIに渡されたのは海外論文や英語マニュアルのように形のある材料で、出てきたものを読んで判断する人が社内にいました。岡田研磨では生成AIとの対話で作った社内システムが転記と集計を受け持ち、現場の意見を集めてシステムを直す人が社内にいます(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。アイニコグループの問い合わせ対応の定型化でも、AIで扱ったのは届いた問い合わせという形のある材料です(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

形のない知識を扱ったタヤマスタジオの事例でも、AIの活用は現時点で鋳造などの基礎的な技術とノウハウに限られています。着色や火入れ具合といった高度なノウハウへの活用は、試行錯誤を続けている段階です(中小企業庁「2025年版 中小企業白書(全文)」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。言葉や記録になっていない仕事は、事例の表に業務名があってもそのままAIへは渡せません。

確認する人がいない会社では、オプトサイエンスが徹底しているファクトチェックの工程そのものが置けません。岡田研磨では自作のシステムについて現場の意見を集めるDX推進チームと拾い上げる専務がいます(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。アイニコグループでは、新しいツールを入れるかどうかを専門家の助言を受けながら検討しています(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。表の右の列に名前を書ける人がいないと、左の列だけを写しても判断の置き場所がなくなります。当社のサイト運用の記録でも、向かない業務として書いたのは入力と出力が決まっていない業務と確認する人がいない業務でした(Claude Codeの業務効率化)。

もう1つの注意は、情報通信白書の事例が取り組みの進んだ側から選ばれていることです。情報通信白書はヒアリング先を「AI活用先進企業」と呼んでいます(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。同じ白書の企業向けアンケートでは、生成AIを「積極的に活用する方針」と「活用する領域を限定して利用する方針」と答えた中小企業の割合は合わせて58.1%でした。大企業の74.0%より低いものの、2024年度調査より大きく上がっています(同PDF/2026年10月6日閲覧)。

一方で中小機構の調査では、中小企業のAI導入率(「全社的に導入している」と「一部の業務で導入している」の合計)は20.4%でした。導入を検討している企業は18.6%です(独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)(ポイント版)」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。事例はうまく進んだ会社が何をAIに渡したかの記録で、同じことをすれば同じ数字が出るという約束ではありません。事例の数値は自社の目標ではなく、どの作業から測り始めるかの手がかりとして読みます。

次の一歩は、自社の業務一覧から事例と同じ作業を探して印を付けることである

次の一歩は、自社の業務一覧から事例と同じ作業を探して印を付けることです。事例を全部読み込む前に、表の左の列にある業務名を自社の一覧と突き合わせます。手順は次の4つです。

  1. 表の左の列から、自社でも毎週ありそうな業務名を選ぶ
  2. 自社の業務一覧で、同じものを受け取って同じものを作っている作業を探す(部署名の行しかなければ、その部署の人に毎週している作業を聞いて書き出す)
  3. 見つかった作業の横に、AIが出したものを外に出す前に読む人の役職を書く
  4. 役職が書けた作業から1つ選び、事例の右の列と同じ判断をその人に残す前提で試す

3つ目で役職が書けない作業は、前の節で書いた確認する人がいない側にあります。その作業は後ろに回し、役職が書ける作業から始めます。印が1つも付かなかったときは、業務一覧が部署や目的の単位で書かれていないかを先に見ます。

最初の1業務を数字で追えるかどうかで選ぶ考え方は、DXを1つの業務から小さく始める手順に書きました。事例の表はその1業務の候補を自社の外から借りてくる道具で、借りた候補を自社の業務名に書き直したところで役目を終えます。

中小企業のAI導入事例についてよくある質問

Q. 自社と同じ業種の事例が見つからない場合は、どう探せばよいですか?

業種ではなく業務名で探します。たとえば外国語の資料を読む作業はオプトサイエンスの事例と同じ形で、書類を書き写す作業は岡田研磨の事例と同じ形です。自社の業務一覧では、文書を受け取って文書を作っている行から当たると同じ形の作業が見つけやすくなります。

Q. 白書の事例に出てくる削減時間を、自社の目標にしてよいですか?

そのまま目標にはしません。アイニコグループの削減時間は同社提供の数値(2026年4月1日時点)と白書に明記されており、業務の量や人数が違う会社にそのまま当てはまる値ではありません(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。自社の目標は、印を付けた作業が週に何回あるかを数えた現在値から置きます。

Q. 研修から始めるべきですか、それとも業務の自動化から始めるべきですか?

事例には両方の入り方があります。オプトサイエンスは社長自ら業務で試したうえでプロンプトの書き方の勉強会を開いています(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。アイニコグループは本格的なプロジェクトの前に物語を題材にした全社員向けの勉強会を開きました(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。当社のBCP支援の事例でも業務に直結した研修を先に置き、広告代理店の事例ページは制作と運用の下書きと集計をAIに渡す取り組みを並べています。AIが出したものを読んで直せる人がまだ社内にいないなら研修から、いるなら下書きの作業から入るのが目安です。

Q. 事例の会社では、AIの使い方を誰が決めていましたか?

白書の事例では、決める人と現場の声や社外の助言を集める仕組みが組になっていました。岡田研磨ではAIとの対話で自作したシステムについて、若手のDX推進チームが現場の意見を集めて岡田専務が拾い上げ、日々直しています(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。アイニコグループでは、新しいツールを入れるかどうかを専門家の助言を受けながら検討しています(総務省「令和8年版 情報通信白書 第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状」(PDF)/2026年10月6日閲覧)。

SAIの視点:事例の表で埋まりにくかったのは、人に残した判断の列だった

白書の事例と当社の導入事例を同じ表に並べて分かったのは、AIに任せた業務の欄はどの事例でもすぐ埋まり、人に残した判断の欄は数行しか書かれていないということでした。オプトサイエンスのファクトチェックは1文で(中小企業庁「2026年版 中小企業白書 第2部第2章 中小企業の『稼ぐ力』の強化に向けた取組」(PDF)/2026年10月6日閲覧)、当社のBCP支援の事例ページも人に残した判断は「ドラフト生成」という語から読み取るしかありませんでした。事例を書く側もAIに任せた作業のほうを先に書いてしまうことを、当社は自分の事例ページで確かめた形です。

当社が自社サイトの7つの作業で記入した棚卸し表は、出力を人が確認する場所を作業と同じ行に1列で持たせています(AI導入のための業務の棚卸し)。事例を読むときもこの列を自分で書き足しながら読むと、人に残した判断の欄が空いたままになりません。

株式会社SAIのキャラクターが、2列の空欄の表を描いたホワイトボードを指さし、机の上には紙の資料の束が積まれているイラスト

自社の業務一覧の横に、この記事の表から気になった業務名を書き写してみてください。同じものを受け取って同じものを作っている作業が1行でも見つかれば、事例はその行から自社に当てはめられます。お問い合わせでは、その業務名と、いまその作業を担当している役職を添えてください。業務一覧が部署名の行だけのときは、その一覧も添えてもらえれば作業の行に割るところから見ます。

当社の支援の内容はAI導入支援のページにまとめています。

出典と確認日

いずれも2026年10月6日閲覧。事例の社名と数値は各白書の表記のとおりで、当社の2事例は導入事例ページの取り組みの記載だけを使った(期間・頻度・変化の数値は含まない)。