
Key Takeaways
- 業務マニュアルの生成AI作成で例外は失敗した日に書き足すもので、原因を確かめるまでは「〜とみられる」の形の仮の原因として書き、確かめた日に直す。
- 下書きの材料には作業の記録と一緒に現場から受けた質問を入れ、IPAのガイドラインも学習データに含まれていない情報を用いた生成物の作成は困難だとしている(期限を過ぎた文書として2026年10月19日閲覧)。
- 手順は作業する人の動く順に書いて判断が要る箇所に決める人の役職を書き、AIの下書きを確かめる項目も確かめる前に決めておく。
- 当社の投稿の手順書は2026年9月23日の仮の結論「連続投稿の制限」を9月27日に誤りだったと訂正して原因は待ち時間の不足とみており、10月1日には画面の変更に合わせて書き直した。
- クレーム対応やトラブル対処のように進め方が毎回変わる業務は手順書にせず、止める条件と相談先とやってはいけないことの判断の基準だけを書いたほうが使われる。
ベテランだけが知っている例外が手順書のどこにも書かれていない職場で生成AIに下書きを頼んでも、使われる手順書になるかは作った日より失敗した日に例外を書き足す決まりがあるかで決まります。足りないのは指示文の工夫より、配った後に起きたミスや現場から受けた質問を、日付と仮の原因をつけて手順の横に足していく欄のほうです。この欄があれば、一度書いた原因が誤りだった日も元の行を消さずに訂正を足せるので、なぜいまの手順になったかを後からたどれます。
外部の記述は、厚生労働省の職場のあんぜんサイト・総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン・IPAの導入運用ガイドライン・中小企業庁の白書を2026年10月19日に開き直した範囲で書いています。職場のあんぜんサイトは労働災害を防ぐための解説で、事務やサービスの業務マニュアルに当てはめるのは当社の読み方です。当社の記録は社内の手順書1本に2026年9月から10月に足した追記で、マニュアル作りの成果や効果の実績ではありません。
業務マニュアルの生成AI作成とは、作業の記録や受けた質問を材料にAIに手順書の下書きを起こさせ、作業する人の確認と例外の書き足しで仕上げていく作り方である
業務マニュアルの生成AI作成とは、作業の記録や現場から受けた質問を材料にして生成AIに手順書の下書きを起こさせ、その作業をする人の確認と例外の書き足しで仕上げていく作り方です。下書きはAIが速く出せますが、仕上げの2つは作業の現場にいる人の仕事です。配った後も、失敗した日に例外を足して原因を確かめた日に直すところまでを、作り方に含めて考えます。
2026年版小規模企業白書は、小規模事業者が社内ノウハウを蓄積・共有する上で有効だった取組として「マニュアルや手順書の整備」の回答割合が最も高かったとしています(第2-1-49図。デロイト トーマツ「令和7年度小規模事業者の経営課題と事業活動に関する調査」、取り組んでいる事業者への複数回答。中小企業庁「2026年版 小規模企業白書(全体版)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。同白書は社内ノウハウの蓄積・共有を、業務上のノウハウ(技術・知識・経験)が特定の従業員に依存しないよう組織として取り組むことと定義しています。マニュアルで属人化をなくすというのは、この定義の状態を目指すことです。製造の現場で手順書や技術文書の文書化が進んだ例は製造業の生成AI活用にまとめたので、本記事は業種を問わない作り方と直し方を扱います。
図は左に作り方の循環を、右に当社の手順書の書き直しを日付順に、下に業務ごとの指示の型を置いたものです。循環は作業の記録と受けた質問から始まり、AIの下書きと作業する人の確認と配布を経て、失敗した日の例外の書き足しと確かめた日の直しのあと最初に戻ります。
下書きの材料には、作業の記録と一緒に、現場から受けた質問を入れる
下書きの材料には、作業の記録と一緒に、現場から受けた質問を入れます。作業の記録は手順の骨格になり、受けた質問は手順のどこで人が迷うかを教えてくれます。記録だけを渡した下書きは、慣れた人の目で見た手順になりやすくなります。
材料を渡すのは、生成AIが自社の職場の事情を知らないからです。IPAの「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」は生成AIに関する誤解の例として、生成AIを使えばどんなドキュメントも作成できるという考えを挙げています。テキストやドキュメントの作成はできても、複雑な意思決定や学習データに含まれていない情報を用いた生成物の作成は困難だという説明です。同ガイドラインは中核人材育成プログラム7期生の卒業プロジェクトの成果物で、掲載ページには内容がIPAと産業サイバーセキュリティセンターの意見を代表するものではないと注意書きがあり、本文に発行日から2年間の有効期限があるため期限を過ぎた文書として参照しています(IPA 産業サイバーセキュリティセンター 中核人材育成プログラム7期生(卒業プロジェクト)「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン(2024年7月)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。自社の作業の段取りや例外は、学習データに入っていない情報の典型です。
受けた質問を材料に入れる考え方は、AIの運用を直す話としても書かれています。同じIPAのガイドラインは運用担当者の改善の要素として、ユーザから得た改善点や質問事項を参考に教育内容やメンテナンスの項目などを見直すことで実態に即した運用ができるとしています。実務事例に則った運用手順やルールを明確にすることで、さらなる有効活用につながることが期待できるという記述も続きます(期限を過ぎた文書として参照。IPA 産業サイバーセキュリティセンター 中核人材育成プログラム7期生(卒業プロジェクト)「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン(2024年7月)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」本編も共通の指針「アカウンタビリティ」(説明責任)で、必要に応じてAIの出力の誤り等についてステークホルダー(関係者)からの指摘を受け付ける機会を設けるとともに定期的かつ客観的なモニタリング(監視)を実施することを挙げています(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(令和8年3月31日)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。AIに下書きさせたマニュアルの場合、誤りの指摘を受け付ける窓口に当たるのが現場から届く質問です。
集める質問は、次の3種類で足ります。
- 新しく入った人が、作業の途中で手を止めて聞いたこと
- 同じことを、別々の人から何度も聞かれたこと
- 聞かれて、すぐには答えられなかったこと
質問は答えと一緒に、聞かれた日と聞いた人の立場(入って間もない人か・どの工程の担当か)を添えて残すと、下書きのどの手順に足すかを決めやすくなります。材料に入れる記録からは、顧客の名前や個人を特定できる情報を外しておきます。
文書の置き場と更新の係の決め方は社内ナレッジの生成AI活用に書いたので、ここでは手順書の材料に絞ります。研修の教材を自社の文書から作る話はAI社内研修のやり方にあり、本記事が扱うのは作業しながら開く手順書のほうです。どの作業から手順書にするかを決める段階なら、先に業務の棚卸しで作業の単位に分けておくと材料を集めやすくなります。
手順は作業する人の順番で書き、判断が要る箇所にはその場で決める人を書く
手順は作業する人が手を動かす順番で書き、判断が要る箇所にはその場で決める人を書きます。AIの下書きを確かめるとき、最初に見るのは中身の正しさより並び順です。説明しやすい順に並んだ手順書は机で読めば分かっても、作業しながら開くと次に何をするかが探しにくくなります。
並び順を確かめる早い方法は、作業する人に下書きを持たせて実際に1回その作業をしてもらうことです。手が止まった箇所・飛ばした箇所・書いていない操作をした箇所に印を付け、印の付いた箇所だけを直します。下書きを会議室で読み合わせるより、作業しながら開くほうが抜けは見つかりやすくなります。
判断が要る箇所に決める人を書くのは、手順書の中であいまいになりやすい場所だからです。職場のあんぜんサイトは非定常作業(保守作業やトラブル対処など通常の作業と異なる作業)について、複数の部門にわたって行われることが多い反面で事前の連絡調整が十分でなく、作業指示が不明確になりがちだと指摘しています(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「非定常作業」/2026年10月19日閲覧)。同じサイトの不安全行動の解説は、「あるべき姿」である作業標準(作業手順)が明確に定められていないか、定められていても十分な安全教育が行われていなかったために労働者が不安全行動をして労働災害が発生した事例もあるとしています(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「不安全行動」/2026年10月19日閲覧)。
業務マニュアルで決める人を書く箇所は、たとえば次のような分かれ道です。
- 値引きや納期の変更のように、決まった範囲を外れる依頼を受けたとき
- 機械や画面が、いつもと違う動きをしたとき
- 前の工程から届いたものに、不足や食い違いがあったとき
各箇所には決める人の役職と、その人がいないときに決める人の役職を並べて書きます。名前ではなく役職で書いておくと、異動のたびに手順書を直さずに済みます。
AIの下書きを確かめる作業も、判断の1つです。AI事業者ガイドライン第1.2版の別添(AI利用者向け)は共通の指針「公平性」のうち人間の判断の介在に関する具体的な手法として、AIの出力に対し人間が最終判断をすることが適当とされている場合の対応を挙げています。人間が判断すべき項目を事前に明確化しておくことと、判断に必要な能力と知識を習得することと、判断の実効性を確保するための対応を事前に整理しておくことです(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(付属資料)(令和8年3月31日)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。手順書の下書きに当てはめると、確かめる人が見る項目(並び順・判断の箇所と決める人・数値と期限)を確かめる前に決めておき、その作業をする人が確かめる形になります。
例外は失敗した日に書き足し、原因を確かめるまでは仮の原因として書く
例外は失敗した日に書き足し、原因を確かめるまでは仮の原因として書きます。手順書どおりに進まなかった日は、手順書のどこが現場と合っていないかが一番はっきり見える日です。日が経つと何が起きたかは覚えていても、そのときに何を試したかは思い出しにくくなります。
失敗を手順書の見直しにつなげる考え方は、ヒヤリハット(仕事中にもう少しで怪我をするところだったとヒヤっとしたりハッとしたりしたこと)の扱いとして書かれています。職場のあんぜんサイトは作業手順書どおりに作業を行わなかったことが原因だった場合でも、手順書に無理があって守ることができないのかもしれないとし、手順書の見直しの良い機会と考えるべきだとしています。同じ解説は、ヒヤリハットは報告する側にも受ける側にも名誉なことではないため、労働者を責めないという取決めをして実行しないと制度が長続きしないとしています(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「ヒヤリハット」/2026年10月19日閲覧)。業務マニュアルでも失敗した人の名前は書かず、手順のどこで何が起きたかだけを書きます。
例外の欄には、次の6つを書いておくと後から読んでも使えます。
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 日付 | 起きた日 |
| 起きたこと | 手順のどこで何が起きたか(人の名前は書かない) |
| 仮の原因 | 「〜とみられる」の形で書く。確かめていないことを確定の形で書かない |
| その場の対処 | 次に同じことが起きたときに試すこと |
| 確かめる方法 | 何が起きれば仮の原因が正しいと言えるか |
| 確かめた日 | 確かめた日と結果。仮の原因が誤りなら、元の行を消さずに訂正を足す |
当社は、記事を公開するたびにGoogleビジネスプロフィール(Googleの検索結果や地図に出る会社の情報欄)へ最新情報を投稿する手順書を1本持っています。手順書は投稿の手順を上から並べた本文と日付をつけた追記の欄に分かれ、追記にはなぜそうしたかを一緒に書いています。
2026年9月23日は同じ日の2本目の投稿の画面が3回とも開かず、その日の記録には「連続投稿の制限とみられる」と書きました。翌24日は画面が少し待つと開いたため、「空に見えても待つ」という1行を足しています。9月27日には同じ日の2本目の画面が待つと開いたので、9月23日の結論は誤りだったと訂正しました。原因は待ち時間の不足とみていますが、確かめ切ってはいません。
仮の原因を「制限」と確定の形で書いていたら、同じ日に2本目は出さないという決まりが手順書に残っていたかもしれません。確かめていない原因を仮の形で書くのは、こうした決まりが確かめられないまま残るのを防ぐためです。
手順の中でAIを使う業務なら、AIの出力が誤っていた日の対処もこの欄に足します。AI事業者ガイドライン第1.2版本編は共通の指針「安全性」の中で、AIシステム・サービスの安全性を損なう事態が生じた場合の対処方法を検討し、その事態が生じた場合に速やかに実施できるよう整えることを挙げています(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(令和8年3月31日)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。例外の欄は、起きた事態への対処を次に起きた日にすぐ使える形で残しておく場所でもあります。
画面や仕様が変わる手順は、確かめた日を手順の横に残す
画面や仕様が変わる手順には、確かめた日を手順の横に残します。マニュアルの表紙にある最終更新日は文書全体の日付で、どの手順がいつの画面で確かめられたかまでは分かりません。社外のサービスの画面を使う手順は、自社が何も変えていなくても、ある日から手順どおりに進まなくなることがあります。
当社の手順書でも、2026年10月1日に投稿画面の構成が変わり、その日のうちに手順を書き直しました。10月15日には同じ日に3本続けて投稿でき、入力欄を埋める順番の注意を1行足しています。どちらの追記にも日付が付いているので、次に手順どおりに進まなかったときに、どの行から疑えばよいかが分かります。
職場のあんぜんサイトの作業計画の解説は、作業計画は労働者に周知されて実行されるものでなければならず、さらに状況の変化に即応して適正な手続きにより見直される必要があるとしています(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「作業計画」/2026年10月19日閲覧)。業務マニュアルで状況の変化に当たるのが、画面の変更や取引先の仕様の変更です。
AIを使う手順も同じです。AI事業者ガイドライン第1.2版の別添(AI利用者向け)は本編U-2「安全を考慮した適正利用」の具体的な手法として、利用中にAIの活用が適正な範囲・方法で行われているかを定期的に確認することを挙げています(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(付属資料)(令和8年3月31日)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。使っているAIの画面や機能が変わったら、手順の横の日付を見て古い日付の手順から確かめ直します。
確かめた日は、手順の各段の末尾に「10月1日確認」のように短く書けば足ります。見直すときは確かめた日の古い順に並べ、古いものから作業しながら開いて確かめます。AIに更新の下書きを頼むときも、日付つきの追記をそのまま材料に入れ、古い行を消さずに残すよう指示に書いておきます。
下書きを頼む指示は人ごとに書かせず、業務ごとの型にして共有する
1本目のマニュアルが回り始めたら、下書きを頼む指示は一人ひとりに書かせず、業務ごとの型にして共有します。同じ業務のマニュアルでも、頼む人ごとに指示の書き方が違えば、出てくる下書きの並びや細かさもばらばらになります。型にしておけば、材料を入れ替えるだけで同じ形の下書きがそろいやすくなります。
当社のBCP(事業継続計画)支援の事例のページには、実際の業務で使えるプロンプト(AIへの指示)の型を用意したハンズオン研修やBCP文書のドラフト生成などの業務への組み込みが書かれ、結果の欄には提供業務の品質の標準化と属人化の解消が挙がっています(BCP支援の事例)。BCPの文書は業務マニュアルそのものではありませんが、決まった項目を埋めて組織で共有する点で近い種類の文書です。
業務マニュアルの下書きを頼む指示の型には、次の4つの欄を置きます。
| 欄 | 書いておくこと |
|---|---|
| 材料 | 作業の記録・受けた質問・前の版の手順書のどれを、どの順に渡すか |
| 出力の形 | 番号つきの手順・判断の箇所と決める人の役職・確かめた日の欄・例外の欄 |
| 書かせないこと | 材料に無い手順を推測で足さない。分からない箇所は「要確認」と書かせる |
| 確かめる人 | 下書きを作業しながら確かめる人の役職 |
書かせないことの欄が要るのは、材料の節で見たとおり材料に無い職場の事情はAIが埋められないからです。推測で埋められた手順より、「要確認」と空いている箇所のほうが確かめる人の目に留まります。
型は1つの業務に1つで、置き場所を決めて共有します。型そのものにも作った日と直した日を書いておくと、下書きの並びが急に変わったときに型が変わったのかどうかを確かめられます。型を配っても使われなくなる理由のほうは、AI導入が定着しない理由と対策で扱っています。
やり方が毎回変わる業務は手順書にせず、判断の基準だけを書いたほうが使われる
やり方が毎回変わる業務は手順書にせず、判断の基準だけを書いたほうが使われます。クレームへの対応やトラブルの対処や前例のない見積もりのように進め方が相手や状況で変わる業務を手順に分解すると、守れない手順と例外の欄ばかりが増えていきます。ヒヤリハットの解説は手順書どおりにしなかった場合も手順書に無理があるのかもしれないとしていて(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「ヒヤリハット」/2026年10月19日閲覧)、これを毎回変わる業務に当てはめると、守られない手順が増えるのは手順書にする業務の選び方に無理があるからだというのが当社の読み方です。
職場のあんぜんサイトは非定常作業で労働災害が多い理由の1つに、日常的に反復されることが少なく事前の検討が十分でないことが多いうえ、作業者が作業に習熟する機会が少ないことを挙げています(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「非定常作業」/2026年10月19日閲覧)。毎回変わる業務は手順書を作っても読み返す回数が少なく、書いた人も読む人も慣れないまま次の回を迎えます。
手順書を厚くしても、人の間違いはなくなりません。職場のあんぜんサイトはヒューマンエラーの防止の方策として、人が間違えないように訓練する・人が間違えにくい仕組みややり方にする・人が間違えてもすぐ発見できるようにする・間違えても影響を少なくするの4つを挙げています。そのうえで、どんなに人を訓練しても間違いは避けられないとしています(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「ヒューマンエラー」/2026年10月19日閲覧)。当社の読み方では、手順書が主に受け持つのは1つ目の訓練の側で、残りの3つは手順書の外の仕組みでも用意します。
毎回変わる業務に書いておくのは、手順ではなく次の3つです。
- 止める条件:これが起きたら作業を止めて相談する、という線
- 相談先:判断に迷ったときに決める人の役職と、その人がいないときの代わり
- やってはいけないこと:その場の判断でしてはいけない約束や操作
AI事業者ガイドライン第1.2版の別添も、人間の判断を介在させるかどうかの判断基準の例として、AIの出力の信頼性の程度(人間による判断の信頼性との優劣)・人間の判断に必要な時間的猶予・判断を行う利用者に期待される能力などを挙げています(総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(付属資料)(令和8年3月31日)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。毎回変わる業務でAIに下書きをさせるなら、手順ではなくこうした基準の案を下書きさせ、決めるのは作業する人に残します。
手順書にする業務としない業務の分け目は、同じ順番で何度か続けて作業できたかどうかで見ると判断しやすくなります。続けて同じ順番になった部分だけを手順書にし、毎回変わった部分には判断の基準を書く、という分け方も取れます。
業務マニュアルの生成AI作成についてよくある質問
Q. 作業の動画からマニュアルを作れますか?
作業を撮った動画を材料に手順の下書きを起こすことはできますが、並び順の確認と失敗した日の例外の書き足しは動画からは出てこないので仕上げ方は本記事と同じです。
Q. マニュアル作成にはどのツールを使えばよいですか?
ツールの名前より、次の3つの軸で比べます。1つ目は入力した記録の扱いで、社内の記録を入れてよい設定や契約になっているかを利用規約と管理画面の設定で確かめ、契約の読み方に迷う箇所は法務に確認します。2つ目は版の履歴で、いつどの手順を直したかが残るかを見ます。3つ目は置き場で、作業する人が作業の途中に開ける場所へ出せるかを見ます。機能の一覧で比べる前に、この3つで合わないものを外しておくと選ぶ範囲が狭まります。
Q. マニュアルの更新は誰がやればよいですか?
例外の書き足しは、その日に作業した人がその場で行います。確かめた日に本文を直すのは、手順書ごとに1人決めた持ち主の役です。IPAのガイドラインも、利活用ガイドラインはユーザから得たフィードバックを基に内容を更新することで利便性と安全性を考慮したものに整備できるとし、改善への取り組みは一過性にせず継続的に実施することで導入効果の最大化が期待できるとしています(期限を過ぎた文書として参照。IPA 産業サイバーセキュリティセンター 中核人材育成プログラム7期生(卒業プロジェクト)「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン(2024年7月)」(PDF)/2026年10月19日閲覧)。書き足す人と直す人を分けておくと、例外の欄がたまっているのに本文が直っていない状態に気づきやすくなります。
Q. 古い版のマニュアルはどうすればよいですか?
作業する人が開く場所には最新の版だけを置き、古い版は日付をつけて別の場所に残します。古い版を消すと、いまの手順がなぜその形になったのかを後からたどれなくなります。本文から外した手順も、追記の欄に何日にどんな理由で外したかを1行残しておくと、同じ手順を誰かがまた足そうとしたときに止められます。
SAIの視点:誤った結論の行は消さず、当時はそう考えたと残して訂正を続けている
当社の投稿の手順書には、9月23日に書いた連続投稿の制限という結論が消されずに残っています。その行は当時はそう考えたという書き方に改め、後ろに9月27日の訂正を続けているので、誤りと訂正を同じ場所で読めます。

誤った行を消すと、次に同じ画面が開かなかった日に、同じ結論へもう一度たどり着く道が残ります。消さずに残しておけば、なぜ誤りだったのかまでをその場で読めます。訂正した側の原因もまだ確かめ切っていないので、次に画面が開かなかった日にはこの2つの行がそのまま材料になります。
手元のマニュアルを開き、手順の横に確かめた日が1つでも付いているかを見てください。日付の無い手順が、確かめた日と例外の欄を足していく最初の場所です。
お問い合わせには、いまお使いのマニュアルを1本と、ここ最近のミスや現場から受けた質問の記録を添えてください。顧客名や個人名は伏せてお送りください。AI導入支援では、その記録を下書きの材料にする業務ごとの指示の型を作り、日常の業務の流れに組み込むところまでを扱います。
出典と確認日
外部の出典はいずれも2026年10月19日閲覧。職場のあんぜんサイトの解説は労働災害の防止を目的にしたもので、業務マニュアルへの当てはめは当社の読み方です。
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「ヒヤリハット」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「作業計画」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「非定常作業」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「不安全行動」
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」安全衛生キーワード「ヒューマンエラー」
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(令和8年3月31日)」(PDF)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(付属資料)(令和8年3月31日)」(PDF)
- IPA 産業サイバーセキュリティセンター 中核人材育成プログラム7期生(卒業プロジェクト)「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン(2024年7月)」(PDF)(掲載ページの最終更新日は2024年7月31日。掲載ページの注意書きのとおり、内容はIPAと産業サイバーセキュリティセンターの意見を代表するものではなく卒業プロジェクトメンバーの見解に基づく。本文に発行日から2年間の有効期限の記載があり、2026年10月時点では期限を過ぎた文書として参照)
- 中小企業庁「2026年版 小規模企業白書(全体版)」(PDF)(第2-1-49図。デロイト トーマツ「令和7年度小規模事業者の経営課題と事業活動に関する調査」)
- 当社の運用記録: 記事の公開ごとに使う投稿の手順書の日付つきの追記(2026年9月23日・24日・27日、10月1日・15日)。BCP支援の事例は事例ページに書かれた定性の記述だけを使用