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営業代行のAI活用事例|反響対応・架電・掘り起こしの実例

執筆:清水 諒(株式会社SAI 代表取締役)

営業代行のAI活用事例|反響対応・架電・掘り起こしの実例

Key Takeaways

  • 営業代行の業務でAIが最初に入るのは反響への初回接触と商談設定であり、公開事例では接触までの速さがそのまま商談数に効いている。
  • アウトバウンドでは架電やメールの量をAIが作り、人は担当者につながった通話や好反応の返信だけを扱う分業が海外と国内の双方で見られる。
  • 休眠リードや失注案件の掘り起こしは人が後回しにしやすい領域で、AIエージェントに自動フォローを任せた事例が複数公開されている。
  • 商談記録・提案準備・新人教育へのAI活用は、獲得数より先に人の時間を空ける形で効く。
  • 公開事例の多くはベンダー自社サイトの自己申告値であり、分母・比較期間・対象チャネルを確かめずに自社の見込みへ置き換えないほうがよい。

「架電の数は増やせない。人も増やせない。それでもアポの数は求められる」——営業代行の現場で聞く話です。人の時間そのものを商品にしている以上、単価×稼働時間の掛け算からは抜けにくい構造があります。本記事では公開されている営業代行のAI活用事例を業務別に並べ、うまくいかなかった記録と、日本で当てはめる前に差し引くべき前提まで書きます。

数値は出典の記載どおりに引用し、誰の公表値なのかも併記します。

営業代行の業務とAIの使いどころを1枚に

営業代行の業務とAI活用の対応マップ。反響対応と商談設定、アウトバウンドの架電と開拓、休眠リードの掘り起こし、記録と準備と教育の4領域に、公開事例で使われたAIの役割を対応させた図

図にすると、AIが入るのは商談そのものではないと分かります。入口の速さと量、放置された在庫や前後の記録が対象になり、人でしか作れない部分は真ん中に残ります。業務の切り分け方は営業自動化の対象業務の選び方で4象限に整理しています。反響を受けたあとの一次接客と追客を不動産の側から見た整理は、不動産売買のAI活用事例に同じ形で並べました。

反響対応と商談設定——速さがそのまま数字になる領域

営業代行で最も分かりやすくAIが入っているのは、Webサイトからの反響対応です。問い合わせから最初の接触までの時間が、そのまま商談数に効くからです。その反響を作る側の工程は広告代理店のAI活用事例に同じ形で並べました。

Salesforce(米国)は、自社サイトにQualifiedのAI SDR「Piper」を導入しました。承認済みのサイトコンテンツやAgentforce Salesのデータに接続し、訪問者との会話から資格判定と商談予約までを任せる構成です。同社公式によれば、設定から稼働までは30日でした。2026年4月の稼働開始以降でコンバージョン率6%、週平均60件超の商談予約という結果が公表されています(Salesforce on Salesforce, 2026年7月)。ただしこの6%が何に対する率かはページ上で定義されていないため、分母は分からないまま読む必要があります。

Salesforce公式の顧客事例によれば、建設機材メーカーのEquipter(米国)は週150〜200件の反響を抱えるなかでAgentforce Salesを導入し、既成テンプレートを使って約2週間で立ち上げました。導入前は初回接触までに8時間、長いときはそれ以上かかっていた一方、AIエージェントは数分以内にアプローチを開始します。同事例ではSNS経由リードの反応率が4%から約10%へ改善し、これを2.5倍と表現しています(Salesforce 顧客事例)。この2.5倍はSNS経由リードに限った数値で、意欲の高いサイト経由の問い合わせは引き続き人の営業が担当しています。反響対応そのものの設計はインサイドセールスの立ち上げ方を参照してください。

アウトバウンド——架電とメールの「量」を人以外で作る

新規開拓の代行では、量が成果の前提になります。AIが担うのは、人でなくても成立する部分の切り分けです。

ベンダー公式の事例によれば、HubSpot(米国)はAMER・EMEA・JAPACにまたがる400名規模のBDR組織へNooksのAIダイヤラーとコールドコール練習用のAIコーチングを導入しました。同事例では実際に会話が成立した数は59%増、1人あたりの架電量は73%増と記載されています。新人の立ち上がり期間は6か月から4か月へ短縮し、BDR1人あたりのパイプライン生産性は24%向上したとあります(Nooks 顧客事例, 2026年2月)。

決済サービスのSumUp(グローバル展開のフィンテック企業)は、ArtisanのAI BDR「Ava」で地域の小規模事業者向けアウトバウンドを回しています。理想顧客像に合う事業者の抽出から地域データを使ったメールの個別化と複数回の配信までをAIが担当し、好反応の返信だけを人のチームへ渡す設計です。ベンダー公式の事例では、18か月未満で976,000通を超える個別化メールを送り、週およそ15件のポジティブな返信を得たと記載されています(Artisan 顧客事例)。

国内にも近い動きがあります。成果報酬型のテレアポ代行を手がける株式会社ディグロス(日本)は、自社プラットフォーム「コラパス」の「AIテレアポ」で初期コールから受付通話までをAIに担当させています。同社のサービスページには「約7割の架電コスト削減」と記載があり、担当者につながる見込みが高い通話のみをコールスタッフへ引き継ぐことでアポイント取得率が向上すると説明されています(ディグロス コラパス)。測定方法や期間の記載がない自社の販促表記のため、業界水準としては読めません。同社は2025年8月に通話サービス会社の子会社化も発表しています(PR TIMES, 2025年8月)。

休眠リードと失注案件——人が後回しにする在庫を掘る

依頼が集まるのはたいてい新規のリストですが、成果が眠っているのは過去に問い合わせがあって止まった名簿だったりします。

Iron Mountain(米国)はConversicaのAIエージェントを導入し、営業が着手できずにいたリードへの自動フォローを実施しました。ベンダー公式の事例によれば、休眠していたエンタープライズリードの60%に再接触できたと記載されています。Conversicaが担当したリードの成約率は2.5倍、リード1件あたりの接触回数は4倍とあります(Conversica 顧客事例)。

ソフトウェア企業のRevenueWell(所在国は出典に記載なし)は、商談化していないMQLへのフォローを定型シーケンスからHubSpotの「Prospecting Agent」へ置き換えました。HubSpot公式のAI事例一覧ページに載る同社担当者の発言として、予約された商談の総数が28%増えたと掲載されています(HubSpot AI事例一覧)。同じ名簿に、配信の形を変えただけです。ただし単体のケーススタディページはなく、一覧の掲載が入れ替われば辿れなくなる出典です。

現場サービス向けSaaSのSimpro(北米・豪州・ニュージーランド・英国に拠点)は、6senseのAIメールエージェントをBDR業務に入れました。インバウンドへの返信と失注案件の掘り起こしをメールエージェントが担当し、英国市場から着手しています。6sense公式の事例によれば、返信率は42%、有効判定率(qualified rate)は23%と記載されています。英国の第2四半期では売上目標の125%を達成し、平均案件規模は126%増とあります(6sense 顧客事例)。担当者は増員せずに5人目のBDRを持てる点に魅力を感じたと述べています。

記録・準備・教育——商談の前後にある時間を空ける

代行の見積もりに乗りにくいのが、記録と準備の時間です。ここは獲得数より先に人の時間が空く形で効きます。

みずほ銀行(日本)は、音声解析AI「MiiTel」をZoom PhoneおよびZoom Video Meetingsと連携させました。リモート法人営業の面談記録を自動作成し、要約から案件管理までを一体で扱う環境です。ベンダーのRevComm公式noteによれば、従来1人1日あたり約1時間かけていた面談記録の作成工数を75%削減したと記載されています。提案件数は従来比で約140%に向上したとあります(RevComm 導入事例, 2026年6月)。

Anthropic(米国)は、Gongの「Revenue AI OS」を営業組織に導入しました。商談の録音と文字起こしを起点に、要約・メール下書き・タスク化・優良商談の共有までを回す使い方です。Gong公式の事例によれば、Gongを含む複数の施策を通じて営業担当の生産性は64%向上し、立ち上がりは46%速くなったと記載されています。利用席数も91から243へ増えたとあります(Gong 顧客事例)。

Lumen Technologies(米国)は、営業とカスタマーサービスを中心に数千人分のCopilot for Salesを導入しました。Microsoft公式の顧客事例には、最高収益責任者の発言として顧客アプローチ前の調査が通常4時間かかっていたところ生成AIで15分になったと掲載されています(Microsoft Customer Stories, 2024年5月)。商談で見せるものを短時間で用意する発想は営業デモの作り方と見せ方にも通じます。

Verizon(米国)の事例は、応対の効率化が販売へ回った例です。Reutersの報道によれば、同社は社内文書およそ15,000件をGoogleのGeminiに読み込ませたAIアシスタントを28,000人規模のサービスチームへ展開しました。同報道は、このチーム経由の売上が展開以降40%近く増えたと伝えています(Reuters(Investing.com転載), 2025年4月)。

うまくいかなかった記録——AI SDRの試用が1か月で終わった例

ここまでの数値は、うまくいった側の記録です。反対の記録も公になっています。

ZoomInfo(米国)はAI SDRツールの11xを約1か月試用しましたが、継続には至りませんでした。TechCrunchの調査報道によれば、同社の広報は試用期間中に製品が自社のSDRより明らかに劣る結果だったと述べています。あわせて、許可なく自社ロゴを顧客事例に使われたとも述べています(TechCrunch, 2025年3月)。11x側は不正確な顧客表記は削除済みで、リテンションは79%だと反論しています。同じAI SDRという枠でも、結果は導入した側の運用で分かれます。

日本の営業代行に当てはめるときの注意

海外の数値は参考になりますが、そのまま自社の見込みにはできません。差し引くべき前提が4つあります。

出典の性質を分けて読む。 本記事で扱った事例の多くは、ベンダー自社サイトの顧客事例です。第三者の検証や監査を経た数値ではなく、導入先とベンダーの自己申告にあたります。一方でVerizonとZoomInfoの2件は報道で、取材を経た記述です。なおベンダーの顧客事例ページは公開日を表示しないものが多く、本記事では日付を確認できた出典にだけ発表時期を添えています。

分母と比較対象を確かめる。 Salesforceの6%は、ページ上に分母の定義がありません。Simproの125%は、英国の第2四半期に限った達成率です。Equipterの2.5倍は、SNS経由リードに限った反応率の改善です。何と何を比べた数字なのかを外すと、自社の試算がずれます。

チャネルの前提が違う。 海外の事例はメールとサイト上の会話が中心です。日本のBtoBでは電話や紹介、既存取引の比重が高い会社も多く、大量のメール配信をそのまま前提にできるとは限りません。

法令と商習慣の確認を先に置く。 電話勧誘や広告メールの扱い、通話録音の告知、個人情報の取得目的と第三者提供。代行では、誰の名義で誰のデータを使って接触するのかという整理も必要になります。適用関係は取引の実態によって変わるため、運用を決める前に法務や専門家へ確認してください。

もう一つの前提はデータです。通話ログも商談記録も残っていない状態でAIを入れても、要約するもとがありません。記録が散らばったままの会社が先に手を付ける範囲はExcelとデータ基盤の記事にまとめています。

営業代行のAI活用に関するよくある質問

Q. 営業代行の業務のうち、AIから着手しやすいのはどこですか?

記録と反響対応の2つです。記録は顧客に直接出ないため失敗しても影響が小さく、反響対応は初回接触までの時間という効果の測り方がはっきりしています。新規リストへの一斉配信から入ると、名簿と文面の質の問題がAIの問題に見えてしまいます。

Q. AI SDRを導入すれば、SDRの人員は不要になりますか?

公開されている事例は、いずれも人を残した構成です。Equipterでは意欲の高いサイト経由の問い合わせを人が担当し、SumUpでは好反応の返信だけを人へ渡しています。AIが担うのは初期対応と量で、判断と関係構築は人に残ります。

Q. 公開事例の数値は、自社でも同じように出ますか?

同じ数値が出る前提は置かないほうがよいです。多くがベンダー自社サイトの自己申告値であり、分母や比較期間の定義が示されないものもあります。ZoomInfoのように継続しなかった記録も公開されています。自社の名簿と商材で小さく試すのが順番です。

Q. 日本の営業代行でAIを使うとき、法令面では何を確認すべきですか?

電話勧誘や広告メールの規制と通話録音の告知、個人情報の取得目的と第三者提供の扱いが論点になります。代行では預かったデータを誰の名義で使うかも整理が要ります。適用関係は契約と運用の実態で変わるため、法務や専門家への確認を導入設計と同時に進めてください。

SAIの視点:AIを「入れる」のではなく、営業の仕組みごと作る

ここまで一般論として並べた話に、株式会社SAIがどう関わるかを書きます。

一つはAI導入支援です。業務の棚卸しから実装・研修・定着までを伴走します。記録の自動化や反響対応の高速化は、既存の業務フローへ接続する作業が本体です。どの業務のどの手順を置き換えるかまで一緒に決めます。

もう一つはFDE伴走開発です。エンジニアが現場に入り、その場で動くものを見せながら仕様を決めていきます。営業の周辺業務は会社ごとに手順が違うため、既製ツールの設定だけでは埋まらない箇所が残ります。そこを作る役割です。

さらに、営業の仕組みそのものを一緒に作る形として自責〜JISEKI〜があります。初期開発費用はいただかず、報酬を成果に連動させるレベニューシェア型です(外部サービスの利用料などの実費は別です)。意思決定と顧客との関係は貴社に残るため、決められる方が関わる案件だけを審査制で受けています。

「うちの営業代行業務なら、どこから切り出せるか」——その整理からで構いません。最初のご相談では、いま人がやっている手順のどこまでを置き換えられるかを一緒に洗い出します。お問い合わせください。