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成果報酬型のシステム開発|何を誰が数えるかで見分ける

執筆:清水 諒(株式会社SAI 代表取締役)

成果報酬型のシステム開発|何を誰が数えるかで見分ける

Key Takeaways

  • 成果報酬型のシステム開発は数える対象が成果物・件数・売上のどれかで中身が変わるので、何を誰が数えるかで見分け、数が動かなかったときの扱いまで署名の前に確かめる。
  • 成果物に払う形には民法の請負(第632条)か成果に報酬を払う準委任(第648条の2)の定めが関わり、IPAのモデル契約は検査仕様書を原則として発注側が作り検査期間内に異議が無ければ合格とみなす形を置いている(2026年10月21日閲覧)。
  • 件数に払う形では同じ行動でも計測の道具の設定で数が変わり、Google 広告は「すべて」か「1 回」かのカウント方法を選べるので、契約ではどの記録の数を使うかを名指しする(2026年10月21日閲覧)。
  • 売上に連動させる形では作ったものではなく事業の売上を数えるので、開発の範囲より先に対象の売上と始まりの日と締めの日を書き、数えた数を誰が確定させるかまで決める。
  • 要件を決める前の工程を成果に払う形にするとまだ決まっていない成果物を数えることになり、IPAの解説も要件定義等の業務がこの形式になじむかは検討を要するとしている(2026年10月21日閲覧)。

「成果報酬型」と書かれた2社の提案書のうち片方は検収で報酬が立ち、もう片方は問い合わせの件数で報酬が立つ書き方なら、同じ言葉でも中身は別の契約です。見落としやすいのは、数を写して渡す人と締めの日、それに数が動かなかったときに払うものと手元に残るものです。この記事には、民法が請負と成果に払う準委任に置く割合の報酬の条件と、申し出を並べて比べる表を載せました。

広告の成果報酬型の出稿や求人の採用課金、人事評価の成果報酬は同じ言葉を使う別の取引なので、ここでは扱いません。民法と取適法についての記述は条文と公的な解説を読んだ範囲の一般的な説明で法的助言ではないので、個別の契約は弁護士などの専門家に確かめてください。外部の記述はいずれも2026年10月21日に読んだ範囲です。当社について書くのは自責〜JISEKI〜と新規事業開発支援のページ、2026年10月6日配信のプレスリリースに載せた契約の設計で、事業の実績や案件の数字ではありません。

成果報酬型のシステム開発とは、作業した時間ではなく数えた成果に報酬を結びつける開発の契約で、数える対象は成果物・件数・売上に分かれる

成果報酬型のシステム開発とは、作業した時間や人数ではなく、契約で決めた方法で数えた成果に報酬を結びつける開発の契約です。同じ「成果報酬型」でも、数える対象は大きく3つに分かれます。検査に通った納入物を数える形と、問い合わせや申し込みの件数を数える形と、事業の売上に連動させる形です。

成果報酬の形を比べた表。行は成果物に払う・件数に払う・売上に連動して払う、列は何を数えるか・誰の記録で数えるか・いつからいつまで・動かなかったとき。成果物の行は、検査の基準に合った納入物を発注側の検査で数え(期間内に異議が無ければ合格とみなす定めもある)、期間は納入から検査期間の終わりまでで、途中で終われば条件に合う場合に可分な部分で受ける利益の割合に応じた報酬になる。件数の行は、契約で決めた1件(重複と取り消しの扱い)を名指しした記録(広告の管理画面か自社の顧客台帳か)で数え、期間は計測の開始日から締めの日までで、動かなければ成果の分は立たず固定の分と実費は契約しだい。売上の行は、対象と決めた売上を両者が見られる売上の記録で数え、期間は起算日から終わりの日までで、動かなければ報酬は立たず実費は別で作ったものの扱いは契約で決める。表の下に、署名の前にすべての欄を埋めるという帯がある

表の行が数える対象で、列は契約書で埋める欄です。誰の記録で数えるかも数が動かなかったときに残るものも、行ごとに違います。提案書に「成果報酬型」とだけあってどの行かが読み取れないなら、比べる前にその1点を相手に尋ねます。

件数や売上に払う形では報酬の額を決める数え方そのものを契約に書き込むので、数える道具や記録の選び方が報酬を左右します。実際の申し出には固定の報酬に成果の分を足す組み合わせもあり、その場合は成果の分がどの行に当たるかを同じ表で確かめます。

申し出を比べるときは、何を・誰の記録で・いつからいつまで・動かなかったらどうなるかを同じ表の欄に並べて埋める

複数の申し出を比べるときは、数える対象・数える記録・数える期間・動かなかったときの扱いの4項目を行にした表を作り、各社の提案書や見積書から写して埋めます。埋まらない欄はそのまま、署名の前に相手へ尋ねる質問になります。

表は横にスクロールできます。

欄 提案書や契約書で探す箇所 書いていなければ相手に尋ねること
何を数えるか 「成果」の定義、報酬の算定方法 成果は成果物・件数・売上のどれか。件数なら「1件」の定義と重複・取り消しの扱い
誰の記録で数えるか 検査・検収の条項、計測と集計の方法、報告の条項 検査は誰がどの基準で行うか。件数や売上はどの記録の数を使い、両者が見られるか
いつからいつまで 検査期間・計測の開始日と締めの日・起算日と終わりの日 締めの日のあと、誰がいつまでに数を確定させるか
動かなかったら 途中で終わった場合の精算、実費の負担、作ったものの帰属と引き継ぎ 途中までの部分に払うものはあるか。実費と作ったものは誰の手元に残るか

比べる申し出の数だけ右に列を足し、各社の書類の言葉を言い換えずに写すと、同じ「成果報酬型」の中身の違いがそのまま見えます。欄の多くが空いたままなら、報酬の形を比べる前に成果の定義から話し合う段階です。欄が埋まっていても、名指しした記録を自社が実際に持っているかと、締めの日に数を写して渡す人が社内にいるかは自社で確かめます。

成果物に払う形では発注側の検査に通ったかを数えるので、検査の基準と期間を先に決める

成果物に払う形では、納入物が発注側の検査に通ったかどうかが成果を数える単位になります。検査の基準と検査の期間が決まっていなければ、納入物ができあがっても成果として数えられないので、この2つを先に決めます。

請負は、仕事の完成と結果への報酬が対になった契約である

民法第632条は請負を、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する契約として定めています。第633条は報酬を仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければならないとし、物の引渡しを要しないときは約した労働を終わった後でなければ報酬を請求できないという第624条第1項を準用しています(e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」/2026年10月21日閲覧)。

請負で数えるのは、完成した仕事の結果です。システム開発なら、契約で特定したソフトウェアができあがって引き渡されたかが成果の単位になり、それが売れたかどうかは数えません。受託の開発が納品で区切られやすい事情は、新規事業の外注の記事で発注側の目線から扱いました。

成果に報酬を払う準委任は、委任の報酬の定めの中に置かれている

民法第643条は委任を法律行為をすることの委託と定め、第656条は委任の節の規定を法律行為でない事務の委託(準委任)に準用しています。システム開発の準委任契約に委任の報酬の定めがかかるのは、この準用によります(e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」/2026年10月21日閲覧)。

委任の報酬について、第648条は受任者が特約がなければ報酬を請求できないとし、報酬を受けるべき場合でも委任事務を履行した後でなければ請求できないと定めています。これに続く第648条の2は「成果等に対する報酬」という見出しのもとで、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合を扱います。その成果が引渡しを要するときは、報酬は成果の引渡しと同時に支払わなければならないという定めです(e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」/2026年10月21日閲覧)。

IPAの「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」の解説も第648条の2を挙げています。民法上の準委任契約には、作業ではなく作業の成果に対して報酬を支払う類型も規定されているという説明です(IPA(情報処理推進機構)「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第二版>(2025年4月8日更新)(Word)」/2026年10月21日閲覧)。「成果完成型」は条文の語ではなく、第648条の2の見出しは「成果等に対する報酬」です。

検査の基準は発注側が作り、期間内に異議が無ければ合格とみなす定めもある

IPAのモデル契約第27条は、発注側(ユーザ)がベンダと協議の上でシステム仕様書に基づき、納入物の検査の基準となるテスト項目・テストデータ・テスト方法・テスト期間等を定めた検査仕様書を作ってベンダに提出すると定めています。解説は、検収はユーザが中心となって実施するものなので検査仕様書の作成は原則としてユーザが行うと説明しています(IPA(情報処理推進機構)「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第二版>(2025年4月8日更新)(Word)」/2026年10月21日閲覧)。

同じモデル契約の第28条は、発注側が個別契約に定める検査期間内に検査仕様書に基づいて検査すると定めています。検査合格書が交付されなくても、検査期間内に発注側が書面で具体的な理由を示して異議を述べなければ検査に合格したものとみなされます。第4項は、この検査合格をもって検収完了とします(IPA(情報処理推進機構)「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第二版>(ひな型)(Word)」/2026年10月21日閲覧)。解説は、このみなし合格の規定をユーザの都合により検収が引き延ばされることを防ぐためのものと説明しています(IPA(情報処理推進機構)「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第二版>(2025年4月8日更新)(Word)」/2026年10月21日閲覧)。

検査の基準が無いまま納入を迎えると、できあがったものが成果に当たるかを納入のあとで話し合うことになります。検査仕様書の作り手と検査期間の長さは、開発に入る前の契約で決めておきます。

ここまでの条文の読み方は一般的な説明で、法的助言ではありません。手元の契約が請負と準委任のどちらに当たるか、モデル契約の条項をそのまま使えるかは、弁護士などの専門家に確かめてください。

件数に払う形では同じ行動でも道具の設定で数が変わるので、どの記録の数を使うかを契約で名指しする

件数に払う形では、問い合わせや申し込みのような行動を1件ずつ数え、その件数に報酬を結びつけます。同じ行動でも数える道具の設定しだいで件数が変わるので、契約ではどの記録の数を使うかを名指しします。

広告の計測を例に取ります。Google 広告ヘルプの2026年10月21日時点の記載では、コンバージョン トラッキングはどのコンバージョン アクションについても、インタラクション後に発生する「すべて」のコンバージョンを数えるか「1 回」のコンバージョンのみを数えるかを指定できます。設定はいつでも変えられますが、変更は変更後に発生したコンバージョンにだけ適用されて過去のデータには反映されません(Google 広告 ヘルプ「コンバージョンのカウント方法について」/2026年10月21日閲覧)。

別のヘルプページの2026年10月21日時点の記載によると、注文確認ページにタグを置いた場合は利用者がそのページに戻ったり再読み込みしたりすると同じ注文に2回目のコンバージョンが数えられる可能性があります。各注文に固有のトランザクション ID を付けると、重複は数えられなくなるという説明です(Google 広告 ヘルプ「トランザクション ID を使用してコンバージョンの重複を抑える」/2026年10月21日閲覧)。

件数を広告の管理画面で数える契約なら、カウント方法と重複を除く仕組みと設定を変えた日の記録が、そのまま報酬の額を左右します。

契約で決める「1件」は、重複・取り消し・後からの返品の扱いまで書く

契約に「1件」と書くときは、何をもって1件とするかに加えて、次の扱いを決めておきます。

  • 重複: 同じ人や同じ注文が何度記録されたら1件とするか。カウント方法と注文番号のような手がかりをどう使うか
  • 取り消し: 申し込みのあとに取り消された分を数えるか。数えないなら、取り消しをどの記録で確かめるか
  • 後からの返品や解約: 締めの日のあとに出た分を、どの回の件数から差し引くか
  • 記録の名指し: 広告の管理画面の数か、自社の顧客台帳や受注の記録の数か。食い違ったらどちらを採るか

広告の管理画面は広告の働きを測るための集計で、自社の顧客台帳は受注の事実を残すための記録です。目的の違う記録は数え方も違うので、報酬の根拠にする記録を1つに決めてもう一方は照らし合わせに使います。

売上に連動させる形では、作ったものではなく事業の売上を数えるので、開発の範囲より先に対象の売上を線引きする

売上に連動させる形では、納入物でも行動の件数でもなく、作ったものを使った事業の売上を数えて報酬を決めます。どの売上が対象かが決まらないうちは報酬を計算できないので、開発の範囲を決める前に対象の売上を線引きします。

線引きで決めるのは、どの商品やサービスの売上か・どの経路で入った売上か・既存の事業の売上と混ざったときにどう分けるかです。新しく作った仕組みが既存の顧客にも使われるなら、既存の売上がどこまで対象に入るかで報酬の大きさが変わります。売上を分け合う条項の決め方はレベニューシェアの記事で扱いました。

売上の記録を持つのはたいてい発注側なので、受注側がその記録をどこまで見られるかも開発の範囲と同じ時期に決めます。数える対象と集計の始まりの組み立て方は、AI導入の効果測定の記事で測定の側から扱いました。

当社の自責〜JISEKI〜は、この売上に連動させる形で組んだ契約です。報酬は成果連動で、立ち上げた事業の売上をあらかじめ合意した割合で分配し、事業が立ち上がったあとに受け取ります。売上が立たなければ当社の報酬も立たないので、「作って終わり」が構造的に起こりません。ただし、これは金銭の返還を約束するものではありません。外部サービスの利用料や広告の出稿費など発注側の名義で契約する実費は別で、この線引きは契約時に書面ではっきりさせます。

数える期間は始まりの日と締めの日を書き、数えた数をいつ誰が確定させるかまで決める

数える期間は、始まりの日と締めの日を日付か出来事で書きます。そのうえで締めの日に数えた数を誰がいつまでに確かめて確定させるかまで決めておくと、数を巡る食い違いで支払いが止まりにくくなります。

成果物に払う形では、検査期間の終わりが締めの日になる

成果物に払う形で締めの日にあたるのは、検査期間の終わりです。期間内に具体的な理由を示した異議が無ければ合格とみなすIPAのモデル契約の定めは、締めの日を過ぎても数が確定しない状態を防ぐ仕組みとして読めます(IPA(情報処理推進機構)「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第二版>(ひな型)(Word)」/2026年10月21日閲覧)。検査期間を契約に書かなければ、この仕組みも働きません。

件数に払う形では、計測を始める日と締めの日を設定の記録と一緒に残す

件数に払う形では、計測を始める日とその日に使っていたカウント方法を契約に書き、途中で設定を変えたら変えた日も記録に残します。締めの日は月の終わりのような区切りで決め、そのあとに数を確定させる手順を書きます。記録を持つ側が数を写して相手に渡し、受け取った側が決めた日数のうちに異議を出さなければ確定とする形です。検査のみなし合格と同じ考え方を、件数にも当てはめます。

売上に連動させる形では、起算日と終わりの日に加えて、どの時点の売上を数えるかを決める

売上に連動させる形では、作ったものを公開した日か最初の受注があった日かのように数え始める出来事を起算日として書き、終わりの日とそのあとに入った売上の扱いも決めます。もう1つ決めるのが売上を数える時点で、受注した日・請求した日・入金された日のどれを採るかで同じ取引が別の締めの回に入ります。確定の手順は件数と同じく、記録を持つ側が数を写して渡し、受け取った側が確かめて確定させます。

数が動かなかったときに払うものと残るものは形ごとに違うので、署名の前に書面で確かめる

成果物が完成しないまま終わったときや件数や売上が立たなかったときに、何を払い何が手元に残るかは形ごとに違います。終わる段階になってから決めようとすると精算そのものが交渉になるので、署名の前に書面で確かめます。

請負と成果に払う準委任では、条件に合えば途中までの部分に割合の報酬がある

民法第634条は、注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったときと、請負が仕事の完成前に解除されたときの2つの場合を挙げています。どちらの場合も、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときはその部分を仕事の完成とみなし、請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できます。第648条の2第2項は、成果に対して報酬を支払うことを約した委任にこの第634条を準用しています(e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」/2026年10月21日閲覧)。

法務省の説明資料は、請負の割合の報酬を民法の改正で明文化した点(新634条)として説明しており、改正法(平成29年法律第44号)の債権関係の規定は基本的に一括して2020年4月1日から施行されました(法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-」(PDF)/2026年10月21日閲覧・法務省「民法(債権関係)改正法の施行期日について」(PDF)/2026年10月21日閲覧)。

IPAの解説は、成果に報酬を払う類型の準委任契約が中途で終了した場合の報酬請求権は請負に準じて規律されると注記しています。そのうえで解説は、システム開発が中途で終わったときの「可分な部分」と発注側の「利益」と「履行の割合」の評価は自明ではなく、案件によっても異なるとしています。そのため個別契約では、中途で終了した場合の精算をどうするかも含めて定めることが望ましいという立場です(IPA(情報処理推進機構)「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第二版>(2025年4月8日更新)(Word)」/2026年10月21日閲覧)。

作業した分に払う通常の準委任には、第648条第3項があります。委任者の責めに帰することができない事由によって履行できなくなったときや委任が履行の中途で終わったときは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できるという定めです(e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」/2026年10月21日閲覧)。個別の契約での扱いは、専門家に確かめてください。

件数に払う形では成果の分は立たず、固定の分と実費の扱いは契約で決まる

件数が立たなければ、件数に結びつけた成果の分の報酬は立ちません。固定の報酬を組み合わせているなら、その分を作業の対価として払い切るのか件数に応じて減らすのかは、契約の書き方しだいです。広告費やツールの利用料のような実費を誰の名義で契約し、件数が立たなかったときに誰の負担のまま残るのかも同じ書面に書きます。計測のために作ったフォームや設定が終了後にどちらの手元に残るかも、ここで決めておきます。

売上に連動させる形では報酬が立たない代わりに、実費と作ったものの扱いを先に決める

売上が立たなければ、売上に連動する報酬は立ちません。その一方で、発注側の名義で契約した外部サービスの利用料や広告の出稿費は売上と関係なく出ていきます。作ったソフトウェアやアカウントが終了後にどちらの手元に残るかも、売上が立たなかったときにこそ問われます。

当社の自責〜JISEKI〜では開発したコードとアカウントを両社に帰属させ、終了時の引き継ぎも始める前の契約で決めています(決め方の詳細はベンダーロックインの対策の記事)。

要件を決める前の工程を成果に払う形にすると、まだ決まっていない成果物を数えることになる

要件定義や企画のように何を作るかを決める工程を成果に払う形にすると、工程の始まりの時点ではまだ決まっていない成果物を数える約束になります。数える対象がその工程の中で動くので、何をもって成果とするかの合意そのものが難しくなります。

IPAのモデル契約の論点整理は、企画段階を準委任契約とした理由を次のように説明しています。業務要件が具体的に確定しておらず、発注側にとってもその段階の開始時点では成果物が具体的に想定できないので、成果物の特定を前提とする請負にはなじみにくいという理由です。要件定義も契約書の中で独立した段階とし、契約の類型を準委任型にしています(IPA(情報処理推進機構)「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第二版>(2025年4月8日更新)(Word)」/2026年10月21日閲覧)。

同じ解説は、モデル契約で準委任の形式で行うことが想定されている要件定義等の業務について、成果に対して報酬を支払う形式になじむかは検討を要するとしています。個別の案件で成果に払う形式が望ましいなら、その点も個別契約で明確に合意することが必要だという立場です(IPA(情報処理推進機構)「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第二版>(2025年4月8日更新)(Word)」/2026年10月21日閲覧)。

もう1つの弱点は、数えやすい成果に作業が寄ることです。件数に払えば件数を増やす作業が先に進んで問い合わせの中身の確認が後回しになりがちで、売上に連動させれば保守のしやすさや安全のための作業のように売上に表れにくい仕事が後に回ることがあります。どちらも受注側の手抜きではなく、報酬の結び付け方から生まれる偏りです。

偏りを抑えるには、成果の数とは別に品質の条件を同じ契約に書きます。成果物なら検査の基準、件数なら数えない申し込みの条件、売上なら保守や安全のための作業を誰がどの対価で受け持つかがそれにあたります。

どの形が優れているかではなく、工程ごとに合う形が違います。何を作るかを決める工程は作業に払う形で進め、作るものが決まってから成果に払う形へ切り替える組み方もあります。

成果報酬型のシステム開発についてよくある質問

Q. 成果完成型の準委任と請負は何が違いますか?

「成果完成型」は条文の語ではなく、ここでは第648条の2の「成果等に対する報酬」の定めによる準委任を指します。条文の上での大きな違いは、仕事を完成させる約束があるかどうかです。請負は仕事を完成することを約する契約で、準委任は法律行為でない事務の委託です。一方で払う時期の定めは似ていて、どちらも引渡しが要るなら引渡しと同時に払います。途中で終わったときの割合の報酬も、第648条の2第2項が第634条を準用するので同じ枠組みです(e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」/2026年10月21日閲覧)。これは一般的な説明で法的助言ではないので、手元の契約がどちらに当たるかは弁護士などの専門家に確かめてください。

Q. 成果報酬型の契約書には何を書けばよいですか?

何を成果と数えるか・誰の記録で数えるか・数える期間と確定の手順・途中で終わったときの精算と実費と作ったものの扱いを、決まった書式より先に条項の言葉で書きます。

公正取引委員会は、下請代金支払遅延等防止法が改正により中小受託取引適正化法(通称:取適法)となり、改正法は令和8年(2026年)1月1日施行と案内しています(2026年10月21日時点の記載)。同じページは、資本金の額・従業員数・委託内容を選ぶと適用対象の範囲を簡易に確かめられる診断ツールも案内しています(公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」/2026年10月21日閲覧)。対象となる取引は、事業者の資本金規模または従業員基準と取引の内容で定義されます(公正取引委員会「取適法の概要」/2026年10月21日閲覧)。手元の取引が対象に当たるかは、法務や弁護士に確かめてください。

取適法第4条の明示に関する規則の第1条第2項は、代金の額について具体的な金額を明示することが困難なやむを得ない事情がある場合には、具体的な金額を定めることとなる算定方法の明示をもって足りると定めています(e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則(令和七年公正取引委員会規則第八号)」/2026年10月21日閲覧)。成果に連動する報酬でこの定めをどう使うかも個別の判断なので、法務や弁護士に確かめてください。

Q. 成果が出ないまま契約が終わったら、報酬はどう扱われますか?

一般論として請負と成果に報酬を払う準委任には、注文者の責めに帰することができない事由で完成できなくなったときや完成前に解除されたときに、可分な部分で注文者が受ける利益の割合に応じた報酬の定めがあります(e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」/2026年10月21日閲覧)。件数や売上に払う形では成果の分の報酬は立たず、固定の分や実費をどう扱うかは契約の定めしだいです。当社の自責〜JISEKI〜は売上が立たなければ当社の報酬も立たない設計ですが、金銭の返還を約束するものではありません。外部サービスの利用料などの実費は別で、その線引きは契約時に書面ではっきりさせます。個別の契約での扱いは、弁護士などの専門家に確かめてください。

Q. 成果報酬型のデメリットは何ですか?

発注側から見た主なデメリットは3つあります。成果の定義と数え方を決める交渉に手間がかかること、数えやすい成果に作業が寄りやすいこと、要件を決める前の工程にはなじみにくいことです。受注側も数が動かない分の不確かさを引き受けるので、引き受ける範囲や固定の分を細かく詰めることになります。どれも契約の前に数える対象と記録と期間を決めておけば小さくできますが、なくなりはしません。

SAIの視点:数える対象を検収から売上に移したら、売上を数える記録を決めない限り報酬は判定できない

当社は自責〜JISEKI〜のサービスページに比較表を置き、ゴールの行に従来の受託開発は「検収と納品」と書きました。同じ行の自責〜JISEKI〜の欄は「売上が立ち、伸びていくこと」です。数える対象を検収から売上に移した以上、売上をどの記録で数えるかを決めなければ、当社も自分の報酬を判定できません。この設計は金銭の返還を約束するものではなく、外部サービスの利用料や広告の出稿費などの実費は別です。その線引きは契約時に書面ではっきりさせます。事業が立ち上がった後の成果連動という仕組みとこの2つの但し書きは、2026年10月6日配信のプレスリリースでも公開しています。

株式会社SAIのキャラクターが、空欄のマス目だけが描かれた紙を向かいに座る相手へ差し出しているイラスト。机には小さな箱と数取り器とノートパソコンが置かれている

検収は発注側の検査という手続きが数を確定させますが、売上にはその手続きが最初から備わってはいません。だから売上に連動させる契約では、数える記録と締めの日と確定の手順を、作るものの話より先に置くことになります。

自責〜JISEKI〜は審査制で、当社が先に人と時間を出すため、同時に走らせられる事業の数には限りがあります(審査と件数の考え方はステージゲートの記事)。先に人と時間を出すことも金銭の返還を約束するものではなく、外部サービスの利用料などの実費は別で、線引きは契約時に書面で決めます。

自社で事業を持ちながら企画の段階から外の手を借りる形として、当社には新規事業開発支援もあります。進め方は相談・企画の壁打ち・デモでの検証・立ち上げと伴走の順で、納品で区切らず売上が立つまでを一続きで担います。外部サービスの利用料や広告の出稿費などの実費は別で、何が含まれ何が含まれないかは契約時に書面で確認します。

署名の前に相手へ聞く最初の1問は、「この『成果』は誰の記録で数えますか」です。答えが返ってくれば、その申し出が表のどの行に当たるかが決まります。お問い合わせで伺うのは、比べている申し出の「成果」の定義の写し(相手の社名と金額を伏せたもの)と、いま売上や件数を記録している場所の2点です。

出典と確認日

外部の出典はいずれも2026年10月21日閲覧。民法と明示規則の条文はe-Gov法令検索に掲載された現行の条文で読んだ。IPAのモデル契約は、ひな型と解説のWord文書を掲載ページに示された版で読んだ。Google 広告ヘルプの記述は2026年10月21日時点の記載である。当社の一次情報は各サービスのページとプレスリリースに書いた契約の設計で、事業の実績や顧客案件の数値ではない。